資産は大きく「安全資産」と「リスク資産」に分類されます。
字面だけを見ると、
「安全資産をしっかり蓄えておけば大丈夫」
「リスク資産はハイリスク・ハイリターンだから手を出さない方がいい」
と感じるかもしれませんが、決してそうではありません。
この記事では、
を解説します。
「安全資産」とは、将来の収益が確定している資産を指します。
元本割れのリスクはほとんどゼロに近いため「無リスク資産」と呼ばれることもあります。
現在の日本においては多くの安全資産の利率が極めて低いため、収益性はほとんど見込めません。
安全資産の代表例として、以下の4つが挙げられます。
預貯金とは、預け先の金融機関によって定期的な利息と元本の支払いが保証されている金融商品のことです。
預け先が破綻しないかぎり元本が減るリスクはなく、仮に破綻したとしても、1金融機関につき預金者一人あたり「元本1,000万円までと破綻日までの利息」は預金保険保護機構によって保護されており、極めて安全性の高い資産であると言えます。
ただし、同じ預貯金であっても「外貨預金」には注意が必要です。
外貨預金でも元本や利息の支払い自体は保証されていますが、為替相場の変動や為替手数料の支払いなどがあるため、結果的に元本割れを起こしてしまうリスクが存在します。
国債とは、国が発行する債権(投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券)のことです。
債権には満期が定められており、発行体(国債の場合は国)は、満期がきたら利子をつけて投資家に払い戻す義務があります。
元本や利息の支払いについては、発行体である「国」が保証しています。
景気の悪化や政情不安などが続いて債務不履行(デフォルト)に陥る可能性もゼロとは言い切れませんが、現状の日本においては、国債の安全性は極めて高いと言えるでしょう。
保証機能と貯蓄機能が合わさった「貯蓄型保険」も安全資産のひとつです。
満期になるまで保険料を払い続ければ、支払った金額(元本)+利子が払い戻されます。
満期になる前に解約しても「解約払戻金」を受け取ることができますが、早期に解約した場合は解約払戻金が掛金を下回ることがあるのでご注意ください。
やや特殊なケースになりますが、「金」も安全資産のひとつと考えられます。
金価格は日々変動するため、購入時よりも金の価値が下がってしまうこともあり得ます。
しかし、現物資産である金はそれそのものに価値があり、たとえ貨幣価値が暴落するなどの経済危機に陥ったとしても、完全に無価値になることはありません。
このことから「有事の安心資産」と呼ばれることもあります。
「リスク資産」とは、将来の収益が確定していない資産のことです。
元本が保証されておらず、運用の内容次第では元本割れに陥るリスクもあるため「危険資産」と呼ばれることもありますが、大きな利益を得られる可能性もあります。
リスク資産の代表例としては、
などが挙げられますが、その性質は種類ごとに大きく異なります。
すべてが「ハイリスク・ハイリターン」なわけではなく、安定感のある「ミドルリスク・ミドルリターン」のものもあるため、資産形成の目的や目標額などに応じて、どの資産をどの程度保有するかを決めるようにしましょう。
企業(株式会社)が事業資金を集めるために発行した「株式」を投資家が購入して「株主」となり、その持株数に応じて配当金や株主優待などを受け取ったり、売却益(キャピタルゲイン)を狙う投資方法を「株式投資」と言います。
購入する銘柄や運用内容によってリスクやリターンの大きさが異なりますが、同一銘柄をその日のうちに反対売買する「デイトレード」はハイリスク・ハイリターンの部類に入ります。
「投資信託(ファンド)」とは、複数の投資家から募った資金を元手にして運用の専門家が投資・運用を行い、その運用成果が投資額に応じて分配される仕組みの金融商品です。
集めた資金の投資先は株式や債権など幅広く、投資信託ごとの運用方針に基づいてファンドマネージャーが決定します。
運用を投資のプロに任せられるため投資ハードルが低く、投資初心者にも人気の金融商品ですが、そのぶん複数の手数料が発生します。
長期運用かつミドルリスク・ミドルリターンの投資信託が一般的ですが、中にはハイリスク・ハイリターンを狙うファンドもありますので、ご自身の投資スタイルに合ったファンドを選ぶようにしましょう。
「不動産投資」は、不動産を購入して第三者に貸し出し、賃料収入(インカムゲイン)を得ることを主目的としたミドルリスク・ミドルリターンの投資方法です。
賃貸需要の高い物件を手に入れることができれば、長期にわたって安定した賃料収入を得ることが期待できます。
所得税などの節税対策や生命保険代わりとしても活用でき、物件の管理運用は不動産会社に任せられるため、忙しいサラリーマンや主婦の方にも人気の不動産投資。
まとまった自己資金が必要となる「現物不動産投資」以外にも、少額から始められる「REIT(リート)」や「不動産小口化商品」などもあり、豊富な選択肢の中から最適な不動産投資方法を選ぶことができます。
「仮想通貨(暗号資産)」とは、インターネットを通じてやり取りする財産的価値であり、法定通貨との相互交換や代金の支払いなどに利用できるほか、売却益(キャピタルゲイン)を目的とした投資にも活用されるデジタル通貨です。
2009年に運用が開始された「ビットコイン」をはじめ、イーサリアムやライトコインなど、さまざまなアルトコイン(派生の仮想通貨)が流通しています。
多くの仮想通貨には発行数上限があり、流通量に対する需要と供給によって価格が日々変動します。
著名人によるSNSでの発言ひとつで価格が乱高下することもあり、短期間で大きな値動きが発生するため、ハイリスク・ハイリターンの投資方法として知られています。
「将来の収益が確定しているのであれば、安全資産だけを保有していればいいのではないか」と思うかもしれませんが、それは大きな誤りです。
安全資産は元本割れリスクが限りなくゼロに近いものの、収益性もほとんど見込めないため、安全資産だけを保有していても資産形成にはつながりません。
「人生100年時代」と言われる現代においては、給与収入や年金だけに頼らず、投資によって個々人が資産形成していくことが極めて重要となるため、もはや「安全資産を保有していれば大丈夫」ではないのです。
日本では「安全資産:リスク資産 = 5:1」の配分で保有する人が多く、低~中間所得層はさらに安全資産の保有率が高い傾向にありますが、マネーリテラシーが高いアメリカでは「安全資産:リスク資産 = 1:1」と投資に積極的な姿勢が伺えます。
とはいえ、
「どちらの割合が正しい」「リスク資産は資産全体の何割にするべき」
などの明確な指標はありません。
安全資産を多く持ちすぎると資産形成が進みませんが、リスク資産を多く持ちすぎると、万が一の際に大損害を被ってしまう恐れがあります。
「いつまでに、どれくらいの金額を得たいか」を明らかにしたうえで、資産のうち何割を安全資産・リスク資産に配分するかという「資産配分(アセット・アロケーション)」をよく考えるようにしましょう。
リスク資産は高い収益性が見込めますが、運用に失敗すると元本割れを招く恐れもあります。
そのリスクを可能なかぎり低減するために「分散投資」を有効活用しましょう。
分散投資の種類には、
の4つがあります。
値動きや性質が異なるリスク資産に分散投資することで万が一の事態に備えつつ、賢くリスク資産を活用していきましょう。