不動産投資をご検討中の方でなくとも、ニュースなどで「サブリース契約」という言葉を耳にした方も多いのではないでしょうか。
なにかとトラブルが起こりやすく、ネガティブな印象を持たれがちなサブリース契約ではありますが、正しい知識を身につけ、うまく活用することができれば、不動産投資を格段に楽にすることができる便利な手段でもあります。
この記事では、そんなサブリース契約について解説していきます。
サブリース契約とは、投資用物件をサブリース会社にまるごと管理してもらい、空室の有無にかかわらず毎月一定額の家賃保証を受け取れる契約方法のことです。
入居者の募集や物件の管理・運用などはすべてサブリース会社が代行してくれるため、
の3つの管理形態のなかで、オーナーの負担がもっとも小さく済みます。
そのぶん管理手数料はかさみますが、忙しいサラリーマン大家さんや主婦投資家の方、空室リスクを避けたい方から人気が高い契約方法です。
ただし、「たとえ空室であっても毎月一定額の家賃保証を受け取れる」「賃貸経営をすべて代行してもらえる」といった魅力でオーナーを惑わし、不利な条件でサブリース契約を結ばせたことで、後々トラブルにつながるというケースは珍しくありません。
よかれと思って結んだサブリース契約で大損してしまわないよう、契約の仕組みや注意点をよく理解したうえで臨むようにしましょう。
一般的に、満室時の賃料合計に料率(相場は15~20%程度)をかけたものが「サブリース会社の取り分=管理手数料」となり、残りが「オーナーに支払われる賃料=家賃保証」となります。
賃料はサブリース会社とオーナー双方の合意のもとで決定されますが、永遠に同じ賃料をキープできるわけではありません。
サブリース会社には、契約更新時に「賃料の減額請求」をする権利が法的に認められているため、更新のタイミングで賃料が下がることは珍しくありません。
たとえ契約時に「賃料の減額請求は行わない」と取り決めを交わしていたとしても、サブリース側の権利は法律で保障されているため、サブリース会社が取り決めを破って減額請求を行うことは実質可能であり、注意が必要です。
なお、賃料の見直しが行われるのは、なにも契約更新時のみとは限りません。
多くの場合、契約期間に関わらず2年毎に家賃保証の金額が見直されるため、たとえ契約期間が30年であっても、その間ずっと一定の家賃収入が得られるわけではありません。
あくまで、「家賃の減額請求が法的に認められている」のが契約更新時であるだけで、それ以外のタイミングでも家賃保証額が変動する可能性は大いに考えられます。
契約期間はサブリース会社によって異なるため、入念にチェックしておきましょう。
30年一括借上げのように長い期間で契約するケースもあれば、2年単位で更新が必要になるケースもあります。
前述したとおり、契約更新時には賃料の減額請求をする権利がサブリース会社側に認められているため、更新スパンが不適切なまでに短い場合には注意しましょう。
続いて、サブリース契約のメリットを見ていきましょう。
サブリース契約のメリットは、主に以下の4点です。
サブリース契約の最たるメリットが「空室でも一定の家賃保証を受け取れる」という点ではないでしょうか。
不動産投資においてもっとも避けたいリスクは「空室リスク」ですが、サブリース契約においてはその懸念がありません。
また、滞納している家賃の回収もサブリース会社が行ってくれるため、空室リスクや家賃滞納が怖くて不動産投資をためらっている人には特におすすめの契約方法と言えます。
ただし、サブリース会社の多くは「免責期間」を設けており、その期間は入居者の有無に関わらず家賃保証が支払われず、家賃収入がゼロとなります。
免責期間はサブリース会社が入居者を募集するための期間として設けられており、契約日から60~90日間程度とされることが一般的です。
サブリース会社によっては、入退去が発生するたびに免責期間になることもありますので、免責期間の有無や仕組みは事前に必ずチェックするようにしましょう。
サブリース契約のもうひとつの魅力が、「賃貸経営をすべてサブリース会社に委託できる」という点です。
株式やFXなどと比べると手間が少なく、日常的に生じる業務があまりないことで知られる不動産投資ですが、入退去に伴う契約手続きや入居者募集などを負担に感じるオーナーさんもいらっしゃることでしょう。
サブリース契約を結べば、そうした業務もすべてサブリース会社に一任することができますので、忙しいサラリーマン大家さんや遠方に投資用物件をお持ちの方に重宝されています。
賃貸経営において、たびたびオーナーの頭を悩ませる「入居者トラブル」。
コロナ禍で在宅時間が増えたことも影響し、騒音を始めとする隣人トラブルは急増傾向にあると言われています。
サブリース契約であれば、こうしたクレームの対処なども任せることができます。
不動産投資での収益を確定申告する際には、各部屋ごとの家賃や契約情報、入居者募集の広告費用など、さまざまな情報を細かく申告しなければなりません。
サブリース契約であれば、オーナーとサブリース会社との単独の賃貸契約についてのみ申告すればいいので、確定申告の手間を少なく済ませることができます。
一方で、サブリース契約には以下のデメリットも考えられます。
物件の管理を不動産管理会社に委託した場合、家賃の5%程度が管理手数料となりますが、サブリース契約の管理手数料は家賃の15~20%程度と割高になります。
仮に、家賃10万円で10室のアパートを所有していたとしましょう。
満室の場合、家賃収入は「10万円 × 10室 = 100万円」となります。
オーナーが受け取れるのは、ここから管理手数料を引いた金額となりますので、
となり、サブリース契約は他の管理形態と比べて収益性が下がってしまいます。
たびたびお伝えしているとおり、サブリース契約を結んだからといって契約時の家賃がずっと続くわけではありません。
サブリース会社のなかには、家賃が減額される可能性について言及しないまま契約を結び、しばらくしてから大幅な家賃減額を求める悪徳会社もいます。
契約更新時はもちろん、賃料の見直し頻度は必ずチェックしておきたい項目です。
上述したとおり、サブリース会社には「免責期間」が設けられています。
免責期間中は家賃収入がゼロになってしまうため、期間の長さや頻度(「契約時のみ」、「入退去が生じるたび」など)は必ず確認しておきましょう。
サブリース契約では、入居者の募集や選定もすべてサブリース会社が行ってくれます。
そのぶん手間は少なく済みますが、オーナーが入居者の選定に口を出すことはできません。
「万が一孤独死につながったらいけないので、独居老人の入居は避けたい」
「以前入居者トラブルを起こしたことがある人なので、入居をお断りしたい」
などの要望ができなくなりますので、その点には留意しましょう。
設備のメンテナンスやリフォームといった物件の維持管理はすべてサブリース会社が主導しますが、その費用は原則としてオーナーが支払います。
サブリース会社側は可能なかぎり入居者を集めたいので、積極的に新規設備の導入やリフォームを検討すると考えられます。
また、内容や委託先はサブリース会社が選定するため、オーナーの想定よりも修繕費用が高額になる可能性があります。
サブリース契約は、取り決め内容が多岐にわたります。
その複雑さを隠れ蓑にして、オーナーに不利な契約を結ばせる悪徳会社も存在します。
サブリース契約に関するトラブルが頻発していることを受け、2020年には「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(通称「サブリース新法」)が定められ、サブリース契約の説明責任などが明確に定められました。
とはいえ、正しい知識を身につけておいて損はありませんので、業者の言葉を鵜呑みにせず、自身で適切な判断を下せるように準備しておくことをおすすめします。
大きなメリットがある一方で、注意点も多いサブリース契約。
そんなサブリース契約で失敗を避け、少ない手間で不動産投資を行うために、以下の4点を入念にチェックしておきましょう。
たびたびお伝えしてきたとおり、家賃保証の見直し頻度や免責期間は、今後の家賃収入を大きく左右する重要なポイントです。
この2点は必ず明らかにしておき、不利な条件になっていないか確認しておきましょう。
また、サブリース会社のなかには中途解約をしようとすると高額の違約金が発生したり、解約を希望する半年以上前に申し出が必要とする会社もありますので注意が必要です。
オーナーとサブリース会社双方が納得できる条件で契約を交わし、手間やストレスのない不動産投資にサブリース契約を役立てましょう。