不動産投資に臨むうえで、特に入念な対策が必要となるリスクが「災害リスク」です。
地震大国と呼ばれる日本では全国各地で地震が頻発しており、近年では強い揺れと巨大津波が予測される「南海トラフ巨大地震」への懸念も高まっています。
不動産投資において災害リスクを軽減するには、
などが考えられますが、それでも万が一罹災した際の助けとなってくれるのが「地震保険」です。
しかし、「キャッシュフローが厳しいのに、毎月地震保険料を支払うのは正直キツい……」と考える方も多いことでしょう。
について解説します。
地震保険とは、一般的な火災保険ではカバーできない、
を原因とする損害を補償してくれる保険です。
火災保険とセットで加入することが定められており、地震保険単体で加入することはできません。
通常、保険商品は民間の保険会社が単独で運用しますが、地震などによる被害は広範囲かつ甚大になりやすく、保険会社の力だけでは補償することが困難なため、地震保険は「地震保険法」に基づいて国と保険会社が共同で運用しています。
従って、どこの保険会社で加入したとしても、地震保険の補償内容や保険料は原則一定となっています。
損害保険料率算出機構が発表している『損害保険料率算出機構統計集』によると、2021年度の付帯率(※)は69.0%。
実に7割近くの世帯が、火災保険とセットで地震保険にも加入していることが分かります。
※付帯率:当該年度に加入された火災保険契約件数のうち、地震保険を付帯している件数の割合
2001年度の付帯率は33.5%に留まっていましたが、年々割合が高まり、東日本大震災が発生した2011年には過半数を超える53.7%を記録。
その後も付帯率は年々上昇しており、多くの人が地震保険の必要性を感じていることが伺えます。
世帯加入率は2021年度でも34.6%と低水準ですが、これは「当該年度の末日時点で有効な地震保険保有契約件数」を元にした数値ですので、最新の動向を知りたい場合は付帯率を参考にするといいでしょう。
不動産投資において地震保険に加入するメリットは、主に以下の4つです。
ほとんどのメリットはマイホームでも同じように享受することができますが、不動産投資の場合は「1.保険料は経費計上することができる」というメリットも得ることができます。
地震保険の保険料を経費計上すれば、そのぶん不動産所得を圧縮することができ、節税に繋がります。
万が一不動産所得が赤字になった場合には、本業の給与所得と損益通算することで更なる節税効果を得ることもできます。
「2.保険金をローン返済や修繕費用に充てることができる」も重要となります。
たとえ物件が甚大な被害を被ったとしても、ローンの返済は待ってもらえません。
マイホームの場合、働ける環境でさえあれば罹災時でも給与を受け取ることができ、ローン返済に回すことができますが、不動産投資ローンの場合は家賃収入が返済原資となります。つまり、物件が損傷して入居者がいなくなり収入が減るorなくなると、ローン返済が滞ってしまう恐れがあるわけです。
地震保険に加入しておけば、このような事態に陥った場合でも保険金をローン返済などに充てることが可能です。
一方で、不動産投資で地震保険に加入すると以下のデメリットも生じます。
地震保険の保険金は「火災保険の30〜50%」でしか設定することができません。
また、保険金額の上限は「建物5,000万円」「家財1,000万円」と定められているため、被害状況によっては保険金だけで損害を全て賄いきれない可能性があります。
「結局、不動産投資をするうえで地震保険は必要なの?」とお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、答えは「必要かどうかは人や物件の状況次第」となります。
メリットとデメリットを見比べたうえで、メリットの方が大きいと感じた場合。
あるいは、災害リスクが高いエリアに収益物件を所有していたり、可能な限り災害リスクへの対策を講じておきたい方は、地震保険が必要であると言えるでしょう。
逆に、デメリットの方が大きいと感じた場合や、地震保険料の支払いによるキャッシュフローの悪化を懸念される方。あるいは、十分な自己資金があり、万が一の際の修繕費やローン返済への不安がない方などは、現時点では地震保険が必要でないかもしれません。
地震保険が必要かどうかは、その人ご自身の考え方や自己資金、あるいは物件の状況などによって異なります。
本当に必要かどうかをよくよく吟味したうえで、地震保険への加入をご検討ください。