賃貸仲介における「AD」をご存知ですか?
不動産投資初心者の方には耳馴染みのない言葉かもしれませんが、実は賃貸物件を経営するうえで欠かせない重要なものなんです。
この記事では、
について解説します。
不動産賃貸仲介において、ADとは「advertisement(アドヴァタイズメント:意味「広告」)」の略で、「不動産広告料」のことを指します。
ほかに「広告宣伝費」や「業務委託料」などと呼ばれることもあります。
入居者募集のための一般的な広告料は「仲介手数料」に含まれますが、仲介手数料では補いきれない特別な広告活動などを行った場合にADが発生します。
仲介手数料は「家賃の1ヶ月分」が上限と定められていますが、ADの上限は法的には定められていません。
通常、大家や賃貸管理会社が不動産仲介業者に追加広告を依頼することによってADが発生し、その支払いは依頼者(大家や賃貸管理会社)が負うこととなります。
支払いのタイミングは、仲介手数料と同じく「物件への入居が成立した時」です。
一般的に、ADは「家賃の○ヶ月分」という表し方をされます。
たとえば「AD100」は家賃1ヶ月分、「AD300」は家賃3ヶ月分をADとして支払うことを意味します。
ADの相場は物件があるエリアや時期などによって変動しますが、都市部の物件であれば家賃1~2ヶ月分がおおよその相場とされています。
「仲介手数料に上乗せして広告料を支払うのは損じゃないか」
「できることなら余計な出費は抑えたい」
不動産オーナーの中には、そう考える方も多くいらっしゃるかと思います。
たしかに、「通常であれば必要ないはずの出費」であるADを支払うということは、金銭的にも精神的にもオーナーの負担となるでしょう。
しかし、ADをうまく活用できれば、目先の金銭的負担以上のメリットを得られる場合もあるのです。
ADを上手に活用するために、まずはADのメリット・デメリットを把握しておきましょう。
AD付きの物件は、成約時に不動産仲介業者が受け取れる利益が多いため、業者が熱心に客付活動を行ってくれる傾向にあります。
つまり、ADには一種の「インセンティブ」的な側面があると言えるのです。
などにADをつけると、客付活動が活発化し、物件の紹介頻度や成約率の向上が期待できます。
不動産投資においてもっとも避けたいリスクは「空室が続き、家賃収入が得られないこと」ですから、時と場合によっては「ADを付けてでも早期客付を狙ったほうがお得」ということも多いのです。
もちろん、ADをつけると金銭的な負担は大きくなります。
通常の仲介手数料に上乗せしてADを支払うことになるため、キャッシュフローが悪化する可能性がありますので注意が必要です。
ADをつけてでも空室状態の改善を目指すか、別の対策を講じるかは慎重な見極めが必要です。
ADを上手に活用するためには、以下の4ポイントが重要となります。
ADを設定する際は、
などを可能な限り明らかにし、ADをつける意義があるかどうかを確認しましょう。
いくら熱心に広告活動を行ったとしても、その内容が物件のターゲットとずれていては意味がありません。
業者に丸投げするのではなく、オーナー自身が内容を把握し、「これなら実施する意義がある」と納得して臨むことが大切です。
賃貸ニーズは常に一定というわけではなく、一年を通して高い時期と低い時期があります。
一般的には、例年1月から3月にかけて高い時期を迎え、3月のピーク以降はほぼ横ばいに推移する傾向が見られます。
ADは「集客が難しい物件や時期に対し、早期客付を目指して投じる広告料」ですので、自発的な集客が見込める1~3月はADの設定金額を下げる、あるいは外してしまってもいいでしょう。
条件が似ている近隣の「ライバル物件」がAD付きかどうかも重要なチェックポイントです。
もしライバル物件がAD付きであれば、同条件にしなければ同じ土俵で戦うことすら難しくなるかもしれません。
利益を伸ばしたい仲介業者はAD付きの物件を優先的に紹介するため、もしあなたの物件だけがAD付きでなければ、AD付きのライバル物件ばかりが入居希望者に紹介され、あなたの物件は目に触れることすらない、という事態にもなりかねないのです。
ADをつけるかどうかの判断材料とするためにも、近隣のライバル物件のAD状況を確認しておきましょう。
しばらくADをつけていても成約率が向上しない、内覧者が増えないといった場合には、物件そのものが何かしらの課題を抱えていると考えられます。
特に、内覧者が増えているにも関わらず成約につながらない場合は、物件自体に手を入れる必要があると言えるでしょう。
そうした場合には、
などの対策を講じ、物件自体の魅力を上げることを考えてみてはいかがでしょうか。
また、募集資料(マイソク)の定期的な見直しも有効です。
などをチェックし、修正するだけでも一定の効果が見込めます。
「ADの設定金額が低すぎるため、AD付きである意義が薄れている」といった可能性もありますが、むやみに設定金額を引き上げすぎると損をしてしまいかねません。
近隣エリアのAD相場を把握し、相場の範囲内でADを活用することをおすすめします。
先程、「ADにはインセンティブ的な側面がある」と言ったとおり、ADは仲介業者にとって旨味の多いものです。
悪徳業者の中には、本来であれば不要なADを設定するよう促し、必要以上に利益を得ようとする業者もいると考えられます。
たしかに、物件の状況や時期によってはADの設定が必要となる場合も多いですが、ADを設定する際には、
などを確認しておくことが欠かせません。
やたらとADを勧めてくる不動産仲介業者は信用できない恐れがあるため、信頼できる業者とタッグを組むようにしましょう。
ADを「余分な出費」にしてしまうか、「効率的に入居者を確保するための手段」にできるかは、この記事で挙げたポイントが大きく関わってきます。
改めてポイントをおさらいしておきましょう。
ADをうまく活用し、空室とは無縁の賃貸経営を実現しましょう。