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不動産

ESG不動産投資ってなに?中長期の投資に欠かせない「ESG」を押さえておこう

2023年1月27日 金曜日

従来の投資では「リスクとリターン」、「利回り」といったものが重要な指標となっていましたが、近年、そこに新たな観点を加えた投資スタイルが盛り上がりを見せています。

それが「ESG投資」です。

地球環境や社会への影響も意識したESG投資。

不動産投資業界にも、このESG投資のムーブメントが到来しつつあります。

そもそもESGとは

ESGは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を取った言葉で、企業が長期的に成長するために取り組むべき課題とされています。

各要素の主な観点は以下のとおりです。

環境(E)CO2排出量の増大や野生動物の絶滅危機、水質汚染、廃棄物による海水汚染などの環境問題への対策
社会(S)適正な労働条件や職場における男女平等や人権対策、人口問題や格差拡大といった社会問題への対策
ガバナンス(G)法令遵守や情報開示、取締役会などを通じた、企業が健全な経営を行うための自己管理体制

詳しくは『世界中で広まっている「ESG投資」とは?投資を通じて社会貢献を』で解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

この記事では、もう一歩踏み込んだ「ESG不動産投資」についてご紹介していきます。

ESG不動産投資とは

ESG不動産投資とは、上述した「ESGの観点」を取り入れた不動産投資のことです。

ESG不動産投資では、従来の「リスクとリターン」の二軸のみを踏まえた投資ではなく、「社会的インパクト」という第三軸目も考慮し、不動産が中長期的に生み出す価値(環境問題への配慮や、入居者の健康性・快適性の向上など)も意識して投資することになります。

ESGに配慮した不動産投資を行えば、

  • 入居者により快適な住環境を提供する
  • 自然災害などから物件を守る
  • 物件が建つ地域と良好な社会的関係を築く

などが可能となるため、空室率の低下や物件の資産価値向上などが期待でき、長期にわたってより安定した不動産投資が実現できると考えられています。

ESG不動産投資の判断基準としては、「責任不動産投資(RPI)」における「10か条の責任不動産投資戦略」が役立ちます。

10か条の責任不動産投資戦略
  1. 省エネルギー(省エネルギーのための設備改良、グリーン発電およびグリーン電力購入、エネルギー効率の高い建物など)
  2. 環境保護(節水、固形廃棄物のリサイクル、生息地保護など)
  3. 自発的認証制度(グリーンビルディング認証、認証を受けた持続可能な木材による仕上げなど)
  4. 歩行に適した都市整備(公共交通指向型都市開発、歩行に適したコミュニティ、複合用途開発など)
  5. 都市再生と不動産の利用変化への柔軟性(未利用地開発、柔軟に変更可能なインテリア、汚染土壌地の再開発など)
  6. 安全衛生(敷地内の保安、自然災害の防止策、救急対応の備えなど)
  7. 労働者福祉(構内託児所、広場、室内環境のクオリティー、バリアフリーデザインなど)
  8. 企業市民(法規の遵守、持続可能性の開示と報告、社外取締役の任命、国連責任投資原則のような任意規約の採択、ステークホルダーとの関わりなど)
  9. 社会的公正性とコミュニティ開発(低所得者向け住宅供給、コミュニティの雇用研修プログラム、公正な労働慣行など)
  10. 地域市民としての活動(質の高いデザイン、近隣への影響の極小化、地域に配慮した建設プロセス、コミュニティ福祉、歴史的な場所の保護、不当な影響の排除など)

Responsible Property Investing: What the leaders are doing, UNEP-FI
引用:建設産業・不動産業:基本的な考え方 – 国土交通省

このうち1~3が「E(環境)」、4~7と9~10が「S(社会)」、8が「G(ガバナンス)」に関連した項目となっています。

この戦略は、国土交通省も「ESG不動産投資の『基本的な考え方』」として紹介していますので、ESG不動産投資を始めるにあたっての指標にするといいでしょう。

ESG不動産投資に取り組むメリット

近年、急速に市場を拡大しつつあるESG不動産投資。

多くの不動産投資家がESGに関心を寄せている理由は、以下の5つのメリットにあります。

  • 空室率の大幅改善が期待できる
  • 相場よりも高い家賃収入が期待できる
  • 地域そのものの活性化にもつながる
  • 物件の資産価値が落ちづらい
  • 投資を通じて社会貢献ができる

空室率の大幅改善が期待できる

ESGに配慮した物件は、環境や社会に対してはもちろん、そこに住まう人にも優しいという特徴があります。

たとえば、省エネ設備が充実していたり、エネルギー効率が高い物件であれば、月々の光熱費を格段に安く抑えることが可能です。

構内託児所や広場があれば育児もしやすく、バリアフリーデザイン導入の物件であれば、老若男女すべての人にとって安らげる家となるでしょう。

自然災害の防止策がしっかり盛り込まれていることは、今後、住居を選ぶにあたっての重要な指標のひとつとなるはずです。

このように、ESGに配慮した物件は「入居者の健康性・快適性をより一層向上させる」ことができるため、入居者が集まりやすく、入居期間も長くなることが期待できます。

その結果、不動産投資においてもっとも避けたい「空室リスク」を軽減することができ、より安定した家賃収入が見込めるというわけです。

相場よりも高い家賃収入が期待できる

入居者が集まりやすい=需要が高い物件は、相場より高い家賃設定であっても住み続けてもらえる可能性があります。

もちろん、ESGに配慮した物件はそのぶん物件価格も高くなる傾向にありますが、

  • 長きにわたって相場より高い家賃収入が期待できる
  • 物件の資産価値が落ちづらい
  • ゆくゆくはESG配慮の物件がスタンダードになっていく

ということを考えると、十分に見合う先行投資であると考えられるでしょう。

地域そのものの活性化にもつながる

ESGに配慮した物件は、都市整備や労働者福祉などを通じ、その物件がある社会(物件が建つ周辺地域)にも好影響を与えます。

周辺地域が活性化すれば、そこに人が集まってきます。

人が集まってくれば賃貸ニーズも高まりますので、より高い確率で入居希望者を呼び込むことが可能になるでしょう。

物件の資産価値が落ちづらい

資産価値が落ちづらい物件に求められる最大のポイントは「立地」ですが、物件の住みやすさや周辺環境、物件が建つエリアの人気なども重要となります。

立地そのものはESG云々ではどうにもなりませんが、物件の住みやすさという面では大きな期待が寄せられます。

かつ、断熱材や太陽光発電システムなどは、エアコンといった家電ほど経年劣化の影響を受けませんので、長期にわたって住みやすさを維持できると想定されます。

住みやすさを長期間維持できる物件であれば、資産価値も落ちづらく、投資用物件として長く活躍してくれるはずですよ。

投資を通じて社会貢献ができる

もちろん、ESG不動産投資には「収益性の高さ」だけでなく、「社会貢献ができる」というメリットもあります。

「SDGs」という考え方が世界中に浸透していることからも分かるとおり、これからの社会においては、一人ひとりが環境について深く考えることが求められます。

ESG不動産投資であれば、

  • ESGに配慮した物件を建てることで、環境負荷を低減できる
  • ESGに配慮している企業(建設会社など)の応援につながる

などが可能となり、投資を通じて社会貢献することができます。

まとめ

ESGは長期的な成長を目指すための課題であり、長期にわたって取り組むことでより大きな効果を得ることができます。

ESG不動産投資も同様で、今始めることで、将来的に大きな恩恵を受けられると期待できます。

これから不動産投資を始めてみたいという方は、ぜひESGの観点も取り入れてみてはいかがでしょうか。