平日は毎日働くのが当たり前。
朝起きて会社に行って、終業時間中は目一杯働いて、終わったら疲れた体を満員電車に詰め込んでまた家に帰って……
そう思ってしまいがちですが、今、定年を待たずして日々の就労から解放されるライフスタイルが注目を集めています。
この記事では、そんなライフスタイル=FIREについて詳しく解説します。
FIREとは、“Financial Independence, Retire Early”の頭文字から作られた造語で、「経済的な自立と早期リタイア(あるいは早期退職)」を意味します。
企業などから支払われる給与に頼らず、資産運用によって得た収益で生活する(=経済的な自立)基盤を整えて、定年を待たずに日々の就労から解放されよう(=早期リタイア)という考え方で、もともと欧米でブームとなっていたものが、近年日本でも注目されるようになりました。
FIREと似た言葉に「早期リタイア」があります。
定年を待たずにリタイアする、という点ではどちらも同じですが、リタイア後の生活資金をどうやって確保するかという点で大きく異なります。
前述した通り、FIREは資産運用によって得た収益を生活資金に充てるというライフスタイルです。
一方の早期リタイアは、貯蓄や退職金、相続した遺産などを生活資金に充てるため、リタイア後は手元の資金を少しずつ切り崩しながら生活していくことになります。そのため、従来の早期リタイアを目指す場合は「リタイア時点で莫大な資金(リタイア後の生活資金)を手元に用意しておく」必要があり、FIREよりもハードルが高い傾向にあります。
FIREから派生した言葉として「サイドFIRE」や「バリスタFIRE」があります。
サイドFIRE・バリスタFIREとは、リタイア後の生活資金をすべて資産運用で確保するのではなく、一部の資金をパートタイム雇用・サイドビジネス(副業)によって賄う「セミリタイア型」のFIREを指します。
バリスタFIREはサイドFIREと同じものとして扱われることも多いですが、「サイドFIREの中でも、特に『パートタイム雇用によって生活資金を確保する』もの」をバリスタFIREと呼んで区別することもあります。
アメリカでは、会社を早期リタイアすると無保険になってしまうため、FIRE後も健康保険に加入する権利を得るためにパートタイマーとして就労する人が多く、そうしたライフスタイルを指して「バリスタFIRE」と呼称するようになったとされています。
サイドFIREやバリスタFIREについてもっと詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事も併せてご覧ください。
早期リタイアよりハードルが低いと言っても、FIREは決して準備や考えなしに実現できるものではありません。
リタイア後の収入と支出、必要な資金をしっかりと計算した上で臨まないと、思わぬ失敗を招いてしまう恐れもあります。
この段落では、FIREを実現するためのポイントを二つご紹介します。
「4%ルール」とは、もともと米国において生まれたもので、米国株式(S&P500)市場の成長率:7%と、同期間のインフレ率:3%の差が4%であるため、「年間支出額を資産の4%未満に抑えれば、資産が目減りすることなく生活できる」という考え方です。
FIREの目標金額を設定する際にもこの「4%ルール」を用いることが多く、年間支出額を4%で割り返した額が「リタイア時点で必要な資金」となります。その資金を全額運用に回し、年間4%の利益を得ることができれば資産を減らさずに生活できる(=資産運用の収益のみで生活できる)というわけです。
よくFIREについて言及した記事で「年間支出額の25倍の資金が必要」とありますが、それもこの4%ルールに基づいたもの(※)です。
※:4%で割り返した数値と、25倍した数値は同じになります。
試しに「100」を4%で割り返した数値と25倍した数値を比べてみましょう。不安な方は、ぜひお手元の電卓などで同じ計算をしてみてくださいね。
100 ÷ 4% = 100 ÷ 0.04 = 2,500
100 × 25 = 2,500
ただし、4%ルールが今の日本に合っているかどうかは慎重に検討する必要があります。
日本と米国のインフレ率には差がありますし、そもそも4%ルールが提唱された時点と今とでもインフレ率には大きな違いがあります。たとえ米国株式で7%の利益が出たとしても為替相場次第では手元に入る利益が少なくなってしまいますし、どんな投資方法であっても、必ず安定的に7%の収益が得られるとは限りません。
意気込んで退職した後に家計が苦しくならないよう、理想の生活を実現するために必要な年間支出額の算出、およびそれを得るために必要な資金と投資方法の選定は慎重に行うようにしましょう。
リタイア後の生活資金をすべて資産運用による収益で賄うためには、長期にわたって安定した収入が見込める投資方法を選択することが重要です。
また、昼夜PCなどに張り付いて値動きをチェックしないといけない投資方法も避けた方がいいでしょう。運用のために多大な時間を割いてしまう生活であれば、就労時間が運用時間にすり替わっただけで、苦労してFIREを実現する恩恵が薄れてしまいます。
そこでおすすめなのが、投資信託と不動産投資です。
投資信託は、複数の投資家から集めた資金を専門家が運用し、その収益が出資額に応じて分配されるという投資方法です。投資の専門家に運用を一任できるうえ、投資先は国内外の株式や債券、不動産などに分散されるため、分散投資しやすいというメリットもあります。
不動産投資は、所有しているマンションやアパートなどを第三者に貸し出して家賃収入を得るという投資方法です。入居者が定着してくれれば安定して家賃収入が得られるため、FIREの実現にも大きく役立ってくれることでしょう。
不動産投資で運用する不動産はローンを活用して購入することが一般的ですが、リタイアしてしまうとローンが組みづらくなるため(収入の安定性を不安視されるため)、「FIREを目指そう!」と思い立った時点で、まず不動産投資を検討することをおすすめいたします。
投資信託や不動産投資など、ミドルリスク・ミドルリターンかつ少ない手間で運用できる投資方法を活用しつつ、理想のFIREを実現しましょう。
いかがでしたか?
なんとなく耳にしたことはあるものの、詳しい意味までは分からなかったという方も、「FIRE」という言葉について理解が進みましたら幸いです。