2022年4月から、高校の授業で金融教育が必修化されました。
「諸外国に比べて大きく遅れている」と言われて久しい日本人の金融リテラシー向上に向け、ついに政府主導で改革のメスが入ったのです。
今後は主に家庭科の授業で行われることになる金融教育。
いったい、どんな内容の授業が展開されるのでしょうか。
金融教育はこれまでも小中高の学習にある程度盛り込まれてはいましたが、2022年4月に高校の授業で必修化されました。
その背景にあるのは、下記の3つの理由です。
前述したとおり、日本人の金融リテラシーは諸外国のそれと比べて大きく劣っていると言われています。
事実、日本銀行調査統計局の調査によると、日本人の多くは金融資産の50%以上を現金・預金で保有しており、運用資産として保有している割合はおよそ16%に留まることが分かっています。
米欧の保有状況と比較すると、現金・預金の割合が抜きん出て高く、運用資産の割合は極めて低くなっています。
低金利時代の現代においては、いくら預金しても金利収入はほぼほぼ見込めませんが、それでも多くの日本人が預貯金に回しているのは「金融リテラシーが低いため」と言われています。
なぜ、日本人は金融リテラシーが低いのでしょうか。
それは、家でも学校でもお金の教育がほとんどなされてこなかったためです。
日本人の気質として「利益を追求することは意地汚いことだ」「清貧こそ美徳だ」といった風潮があり、お金について積極的に学ぼうとする人が少なかったことも、金融リテラシーが低い要因のひとつと考えられます。
こうした現状を改善すべく、国は2001年に「貯蓄から投資へ」、2016年には「貯蓄から資産形成へ」とのスローガンを掲げ、積極的な資産運用を促してきました。
今回の金融教育必修化も、こうした動きのひとつなのです。
2022年4月1日、成人年齢が20歳から18歳へと引き下げられました。
そのため、高校生であっても保護者の同意なしに契約を結ぶことが可能となり、若者を狙った特殊詐欺や金融トラブルが増加するのではと懸念されています。
こうしたトラブルから身を守るためにも、金融教育が必要であると考えられます。
2019年に発表された金融庁の報告書でも指摘されているように、現状の金融資産や年金だけでは、豊かな老後を過ごすために大きな不足が生じると考えられています。
この不足分を賄うためには、個人個人が積極的に資産運用を行い、保有資産を増やすことが求められます。
先にも述べましたが、日本人は資産運用への意欲や知識が薄いため、そうした現状を打破するためにも金融教育が必要なのです。
それでは、金融教育ではどのような内容を学ぶのでしょうか。
文部科学省が定めている「高等学校学習指導要領解説」では、金融教育について以下のようにまとめています。
具体的には、以下のような内容を学ぶこととなります。
「働いてお金を稼ぎ、収入の範囲内で生活する」という家計管理の基本を学んだり、自分なりのライフプランを立てて将来設計することを学びます。
ライフプランに応じてかかるお金を計算することで、将来的に必要となるお金を予測したり、シミュレーションの作り方を身につけます。
「必要なもの」と「欲しいもの」を区別し、「必要なもの」に優先的にお金を使うことの重要性や、キャッシュレス決済などについて学びます。
日本は諸外国に比べてキャッシュレス決済の普及も遅れているため、現金払いからキャッシュレス決済への移行を促進する狙いもあります。
株式投資や投資信託、不動産投資など、資産を増やす方法について幅広く学びます。
投資の効果や、抱えるリスクといった注意点についても勉強し、かしこい資産形成ができるよう促します。
保険の仕組みや種類などを学びます。
クレジット・ローンは借金であり、その注意点などを学びます。
リボ払いなどの仕組みをよく理解しないまま多用し、金融トラブルに巻き込まれないための知識を身につけます。
詐欺やトラブルについて知り、金融トラブルから身を守るための知識を学びます。
豊かな未来を実現すべく必修化された金融教育。
その内容は、高校生だけでなく、大人も学んでおきたい内容ばかりです。
金融教育が必修化されることで、今後、家庭内でも金融の話題が増えることが考えられます。
授業で分からなかったことや、気になったことを質問される可能性もあるため、この機会に親も金融について学び、お子さんと一緒になって知識を深めてみてはいかがでしょうか。