不動産投資を営んでいる方の中には、不動産所得がある程度の規模に達したため法人化を検討している、という方もいらっしゃることでしょう。
これから不動産投資を検討している方でも、個人事業主として不動産投資を営むべきか法人化すべきかお悩みの方がいらっしゃるかもしれません。
この記事では、不動産投資を法人化するメリットとデメリットについて解説します。
不動産投資を法人化すべきかお悩みの方、法人化にご興味がある方はぜひ最後までご覧ください。
不動産投資を法人化するとさまざまなメリットがありますが、特に影響が大きいメリットは以下の5点です。
所得税は「累進課税(課税標準額が多くなるほど税率が高くなる)」が適用されており、個人に課される所得税率は最大45%にのぼります。
ここに住民税10%が加わりますので、所得の最大55%が所得税・住民税として徴税されてしまうわけです。
一方、法人税の実効税率は20〜30%台であることが一般的ですので、不動産所得が多い方ほど法人化によって高い節税効果を得ることができます。
また、法人を設立して配偶者や子を役員に就任させ、適正な役員報酬を支払うことで所得を分散し、個人の所得を小さくすることで税率を引き下げることも可能です。
法人化すると、個人事業主の時よりも経費計上できる範囲が広がります。
個人事業主は「個人(消費者)」と「事業主」両方の立場を有しており、それぞれの立場を考慮して経費の範囲を決めなければなりませんが、法人は全ての行為が事業にあたると判断されるためです。
損失が生じた場合の繰越期間は、
であり、法人の方が繰越期間が長いため、将来の所得から控除できる機会を多く設けることができます。
不動産所得が個人に蓄積されると、個人の相続財産が増加する(= 相続税が高額になる)可能性がありますが、不動産投資を法人化して所得を分散しておけば、将来的な相続税の軽減にも繋げることができます。
所有する不動産を法人名義にしておくと、賃貸収入の大半を相続税の対象から外すことができますので、より高い節税効果を得ることが可能です。
法人は個人事業主よりも社会的信用が高いため、金融機関の融資審査に通りやすいというメリットもあります。
加えて、不動産投資を法人化する方は一定以上の不動産所得を得ていることが一般的であるため、「法人として不動産投資を営んでいる = 不動産投資実績が豊富である」と見なされやすいことも審査の上でプラスに働きます。
一方で、不動産投資を法人化するにあたっては以下のデメリットも生じます。
不動産投資の規模や状況によってはメリットよりもデメリットの方が大きくなる可能性もあるためご注意ください。
それでは、不動産投資を法人化するデメリットについて順に見ていきましょう。
個人事業主となるには税務署に開業届を提出するだけで済みますが、法人を設立するとなるとそうもいきません。
様々な書類の作成・確認、印鑑の作成、関係各所への届出といった、複雑で面倒な手続きを踏む必要があります。
また、法人の登記手数料や譲渡所得税、不動産取得税、登録免許税といった費用も発生します。
法人は、設立時だけでなく維持にも費用がかかります。
法人の税務処理・会計処理は個人事業主よりも複雑であるため、税理士などの専門家と顧問契約を結ぶことが一般的ですが、顧問契約には年間50〜70万円程度が必要となります。
個人事業主の場合、常時使用する従業員が5人未満の場合などは社会保険への加入義務がありませんでしたが、法人化すると社会保険への加入が必要となります。
給与を支払った場合は、個人の負担分と同額を法人でも毎月負担しなければならないため、法人化すると社会保険料の負担が大きくなります。
法人名義で所有している不動産を売却すると、売却益に対して実効税率29.74%(法人住民税を含む)の法人税が課されます。 もちろん、個人名義の不動産でも売却時には税金が課されますが、長期譲渡所得(所有期間が5年超)の税率は20.315%(住民税を含む)と、法人名義の税率よりも低く設定されています。
個人の短期譲渡所得(所有期間が5年以下)の税率は39.63%(同上)ですので法人の税率と逆転しますが、不動産を5年以上所有してから売却する場合には、法人名義の方が税額が高くなってしまいます。
法人の場合、株主や出資者が死亡すると、保有する株式や出資持分なども相続税の対象として計算されます。
法人化のメリット部分で「相続時の節税対策になる」とお伝えしましたが、こうした部分への対策を怠るとせっかくの節税効果が薄れてしまいますのでご注意ください。
不動産投資を法人化すべきかどうかは、不動産所得の規模や状況に応じて異なります。
不動産所得が多ければ多いほど法人化のメリットを得やすいので、運用を十分に安定・拡大させた上で法人化を検討することをオススメします。