不動産投資において、物件やエリアの選定は極めて重要なポイントです。
数年、数十年の長きにわたって運用し続ける投資方法であるため、長期的な視点で物件やエリアの良し悪しを見極めなければなりません。
この記事では、エリアを大きく「都心」と「地方」に分けて、それぞれのメリット・デメリットをご紹介していきます。
エリア選定の大枠の方向性を決めるために、ぜひご活用ください。
都心で不動産投資を行うメリットは、大きく以下の3点です。
都心で不動産投資を行う最大のメリットが、人口が多いがゆえの「賃貸需要の高さ」ではないでしょうか。
不動産投資においてもっとも避けたいリスクは「空室リスク」ですので、賃貸需要が高く、たとえ退去が発生してもすぐに次の入居者を確保しやすい都心であれば、家賃収入の損失期間を短く抑えることができます。
ひとくちに「都心」といっても人口増加がゆるやかなエリア、あるいは減少傾向にあるエリアなどもありますので、人口の変動に注意してエリア選定をするようにしましょう。
賃貸需要の高さは家賃相場の高さにもつながります。
家賃相場が高いと、そのぶん月々の家賃収入が増えますので、賃料の安い地方に比べて多くの不動産収入を得られると期待できます。
SUUMOの集計によると、東京都でもっとも家賃相場が高い港区の家賃は10.9万円。
一方、家賃相場の低い青森県では、もっとも高い五所川原市でも4.1万円、最安値の三戸郡にいたっては2.4万円と、港区の家賃と5倍近い差が生じています。
※いずれもワンルーム1ヶ月の家賃相場
意外と見落としがちですが、収益物件を購入する際は、将来的に「売却する」ことも考慮しておかなければなりません。
基本的に、不動産投資は長く継続することで高い効果を得られる投資方法ですが、
「新たな収益物件の購入費用に充てるため」
「資産を整理するため」
などの理由で収益物件を手放す機会がいつやってくるとも限りません。
その際になかなか収益物件が売れずにいると、予定が狂ってしまったり、売却のための手間や費用、固定資産税などがかさんでしまったりして、せっかくの収益物件が負債と化してしまいます。
立地がいい都心の収益物件であれば資産価値が高く、需要も見込めますので、いざという時にもスムーズに売却できるというメリットがあります。
一方、都心で不動産投資を行うにあたっては以下のデメリットが考えられます。
都心は地価相場が高いうえに需要も高いため、物件価格が高額になりがちです。
一例として、家賃相場の段落で取り上げた「東京都港区」と「青森県三戸郡」の地価を比較してみましょう。
こちらもSUUMOの調査によるものですが、東京都港区の地価が873.9万円/坪であるのに対し、青森県三戸郡の地価は3.8万円/坪と、なんとその差は約230倍。
もちろん、この差がそのまま物件価格に反映されるわけではありませんが、都心の物件を購入しようとする際には相応の資金が必要となります。
不動産投資における「利回り」には以下の2種類があります。
どちらの利回りも「収入を物件価格で割り戻して算出」するため、物件価格が高額であればあるほど利回りが低くなってしまいます。
そのため、物件価格が高額になりがちな都心での不動産投資は、地方に比べて利回りが低くなるのです。
収益物件を購入する際には「不動産投資ローン」を活用することが一般的ですが、頭金として物件価格の10~20%程度を用意しておくと融資審査に通りやすいとされています。
つまり、ローンを利用するとはいえ、物件価格が高額になればなるほど多額の自己資金も必要になるというわけです。
頭金がゼロの「フルローン」タイプの商品もありますが、
などのデメリットがあり、キャッシュフローの悪化を招く恐れがあることから、慎重な見極めが求められます。
続いて、地方で不動産投資を行うケースを見ていきましょう。
地方で不動産投資を行うメリットは以下の3つです。
「都心における不動産投資のデメリット」の裏返しになりますが、地方は都心に比べて地価が格段に安い傾向にあります。
そのぶん物件価格が安く、自己資金が少ない方でも手を出しやすいという魅力があります。
物件価格が安いと、そのぶん高い利回りが期待できます。
都心の収益物件には利回り3~4%台の物件が多く見られますが、地方では10%を超える物件がほとんどです。
家賃収入の額自体は都心に軍配が上がりますが、利益率で見ると実は地方物件のほうが優れている、というケースも決して珍しくはありません。
ただし、この利回りには注意点も存在します。
詳細は後述する「地方における不動産投資のデメリット」をご覧ください。
無数の賃貸物件がひしめく都会に比べると、地方の競争率は比較的穏やかです。
そもそも賃貸需要自体が少ないため、競争率が低いからといって簡単に入居者を集められるとはかぎりませんが、都心ほど競争や差別化に苦心する必要はあまりないでしょう。
最後に、地方で不動産投資を行うデメリットを見ていきましょう。
地方の不動産投資における最大のデメリットは「空室リスクの高さ」です。
人口が少なく、年々都心への流出が続いている地方においては、賃貸需要もどんどん低下しています。
近くに大学やオフィス街などがあれば安心できますが、キャンパスやオフィスの移転に伴って賃貸需要が激減する、というケースも散見されます。
先程「地方の収益物件は利回りが高い」とお伝えしましたが、これはあくまで「入居者がいる場合」の話であり、空室が続くと期待していた利回りを下回ってしまいます。
提示された高い利回りにばかり気を取られるのではなく、
などをよく考え、慎重に物件を選ぶことが大切です。
賃貸需要の低さは家賃相場の低さにもつながります。
たとえ一定の賃貸需要があったとしても、地方は都心に比べて物価水準が低いため、都心ほどの家賃収入は見込めないでしょう。
注意したいのは、将来的な家賃下落リスクです。
賃貸需要が下がり続けると、今の家賃のままでは入居者が集まらなくなります。
大々的なリノベーションやフリーレントを導入しても入居者が集まらず、やむを得ず家賃を大幅に下方修正した……となると、たちまちキャッシュフローが悪化してしまいます。
都心の物件であれば、購入時や有事の際にも気軽にアクセスしやすいですが、地方の物件だとそうもいきません。
たびたび地方まで出かけるには時間も交通費もかかりますし、何かあった時にすぐさま駆けつけることも困難です。
ご自身が地方住まいであれば別ですが、都心に住みながら地方物件のオーナーになる場合、安心して収益物件を任せられる「信頼できる不動産会社」を見つけることが重要となります。
地方の物件は需要が少なく、老朽化が進んでいる物件も多いため、都心の物件に比べて売却が非常に困難な傾向にあります。
加えて、地方の物件を仲介してくれる不動産会社も限られているため、そもそも不動産会社を見つけることすらままならないケースもあります。
空室が続き、収益性が悪化したため収益物件を手放したい。
少しでも売りやすくするためにリフォームを行うも売れず、手間や費用が膨れ上がり、物件価格を大幅に下方修正してようやく売り手が見つかって……
となると、そもそも不動産投資が赤字のところにリフォーム費用や維持費などが伸し掛かり、さらにキャピタルゲインも想定よりずっと少なくなってしまって、大きな損失を抱えてしまいます。
物件は所有しているだけで維持費や修繕費、固定資産税などがかさみますので、地方で不動産投資を行う際には綿密な出口戦略が求められます。
不動産投資ローンを取り扱っている金融機関の中には、地方の物件に対して融資を行っていないところもあります。
信用金庫など、地方に根ざした金融機関であれば融資を行ってくれることもありますが、オーナー自身が対象エリアに居住していることが条件となります。
仮に融資を受けられたとしても、物件の収益性や貸倒れリスクを考慮した結果、
などの不利な条件でしか受けられない可能性も考えられます。
都心、地方それぞれの不動産投資にメリット・デメリットがあるため、一概に「どちらがいい」と断言できるものではありません。
ご自身の状況や、実現したい投資スタイルに合わせて都心or地方を選択する、というのが一番でしょう。
とはいえ、客付けが容易であるという点では圧倒的に都心に軍配が上がります。
特に不動産投資初心者の方は、入居者の確保に苦心したり、空室に頭を悩ませることも多いでしょうから、空室リスクが少ない都心から不動産投資を始めることがおすすめです。