日進月歩で新たなデジタルテクノロジーが登場し、目覚ましい進化を遂げていく昨今。
ひと昔前には絵空事と思われた「仮想現実(メタバース)」も広がりを見せており、デジタルテクノロジーによってさまざまな不可能が可能になりつつあります。
そんな現代においては、ビジネス分野のデジタル化も欠かせません。
アナログシステムにマンパワーを割き、長時間労働で無理を通すような働き方では、もはや競合争いに打ち勝てない時代がやってきたのです。
この記事では、この先の不動産業界に欠かせない「DX」について解説しています。
現状の業務に限界を感じている方、サービス残業や人材不足にお悩みの方、新規顧客の開拓を進めたい不動産事業者の方はもちろん、将来性ある不動産会社をお探し中の不動産投資家の方も、ぜひ最後までご覧ください。
「DX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)」とは、企業や教育機関などの組織がAIやIoT、ビッグデータといったデジタル技術を用いて「業務改善」や「新たなビジネスモデルの開拓」などを行い、アナログシステムからの脱却や企業風土の変革につなげていくことを指します。
シンプルに言い換えるなら、「デジタル技術を活用し、人々の生活をより豊かなものにしていこうという前向きな取り組み」ということです。
DXという概念自体は、2004年、当時スウェーデンのウメオ大学に在籍していたエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。
現状、我が国におけるDX化は欧米諸国のそれと比べて遅れていますが、経済産業省が2018年9月に発表した「DXレポート」を機にDXの導入が進められています。
さまざまな業界で推奨されているDXですが、不動産業界はとりわけDXと親和性が高く、導入による恩恵が大きい業界であると言われています。
旧態依然としたビジネスモデルが強く残る不動産業界には、
といった課題が蔓延しており、他業種に比べて業務環境に遅れが見られます。
DXはこれらの課題に対する特効薬となりうるため、遅れが目立つ不動産業界だからこそ、DX化によって飛躍的な業務改善が期待できるというわけです。
事実、こうした恩恵を享受するべくDX化を推進している不動産事業者も数多くいます。
不動産テックに関する7企業・1団体が共同で行った「不動産業界のDX推進状況調査」によると、「DX推進をしている」と回答した不動産事業者は全体の90%と高い水準を見せており、前年の調査時からさらに1.5倍に増加しています。
このことからも、不動産業界全体がDX化に取り組んでおり、その割合が年々高まっていることが伺えます。
不動産業界でDXを推進するメリットは、主に以下の5点です。
DX化による恩恵がもっとも大きいと考えられるのが、「業務効率化による生産性の向上」です。
前述した調査でも、DX化に期待している効果としてもっとも多くの回答が集まったのが「業務効率化」でした。
手書き書類のデジタル化や、見込み顧客に配信するメールを自動化すれば、それらの業務に割いていた時間を大幅に短縮することができます。
人の手から離れることでヒューマンエラーがゼロになり、リカバリのための時間も必要なくなります。
ある不動産会社では、システムの統合やペーパーレス化、印鑑レス化などを進めたことで、受発注や会計業務の実に35%を削減することに成功したという事例もあり、DX化による業務効率化のインパクトの大きさを物語っています。
また、顧客の動きやプロモーションの結果を「見える化」することで顧客の見込み度を自動識別し、確度の高いホットな顧客に集中して営業することで、生産性を飛躍的に向上させることも期待できます。
DX化を進めれば、これまではマンパワーで対応していた定型業務をAIなどで自動化することができます。
また、膨大なデータをもとに物件査定を自動化してくれるツールなどを導入すれば、経験の少ない若手社員でも即戦力となることができます。
ベテラン社員は負担の大きい新人教育から開放され、コア業務に集中できるようになります。
これにより、不動産業界における深刻な課題である「人手不足」が解消できるのです。
DX化によって定型業務を自動化し、重要なコア業務に集中できるようになれば、不動産業界で常態化している「長時間労働」の改善にもつながります。
生産性の向上によって業績がよくなれば、従業員のモチベーションも高まることでしょう。
長時間労働から開放され、重要な業務に集中できる環境が整えば、ワークライフバランスが向上します。
従業員は仕事にやりがいを感じ、会社に愛着を抱くようになりますので、離職率の低下にもつながります。
VR内見やオンライン契約を導入すれば、これまではリーチできなかった地方在住者や忙しいビジネスマンも新規顧客として取り込むことができます。
先進的な取り組みがネットニュースなどを通じて評判となれば、興味をもった新しい層への接触も期待できます。
また、業務効率化と人手不足の解消によって顧客のために十分な時間を割けるようになれば、顧客のさまざまなニーズに柔軟に対応できるようになり、顧客満足度の向上が期待できます。
現代のビジネスにおいてSNSやポータルサイト上のクチコミは大きな影響力を持ちますので、顧客満足度の向上によって集客力アップも見込めます。
「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年に発表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』の中で言及された問題のことで、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存することによって我が国の経済が停滞し、国際競争に大きな遅れが生じる可能性のことを指しています。
この「2025年の崖」によって生じる経済損失は最大で年間12兆円にのぼるとされており、日本の今後を左右する大きな問題となっています。
これに対抗する手段として経済産業省が推進しているものこそがDXです。
開発から長い時間が過ぎてサポート対象外となった古いシステムや、度重なる改善を加えたことで複雑化が進んでブラックボックスと化したシステム、担当者が離職してしまい使い方が分からないシステムなどをDXによって刷新することで「2025年の崖」を回避し、熾烈な市場争いで優位性を保つことが重要です。
このように、DX化を推進することで得られるメリットは大きく、早く取り組めば取り組むほど大きな恩恵を享受することができます。
しかし、DX化を進めるためには、
といったハードルをクリアする必要があります。
特に「DXが軌道に乗るまで負担がかかる」「DXによる効果を実感できるまで時間がかかる」という点を従業員全員に周知し、共通の認識を持っておかないと、一時的に負担が増えたことで社内の不満が高まる恐れがありますので注意しましょう。
今後、不動産業界で生き抜くためにはもはや欠かせない「DX」。
「ずっとこのやり方でうまくいってきたんだ」が通用しない時代が間近に迫っているのです。
不動産投資においてパートナーシップを結ぶ不動産会社を選定する際にも、DXの進捗状況をチェック項目のひとつに据えてみてはいかがでしょうか。
DX化が進み、従業員がコア業務に集中できている優良な不動産会社であれば、きっと満足できるサポートを受けられるはずですよ。