よくニュースなどで、
「前日の同時点に比べ、42銭の円高・ドル安となりました」
「円相場が20年ぶりの円安水準を更新しました」
といった文言を耳にしますが、「円高」「円安」の意味は正しく理解できているでしょうか?
なんとなくのイメージでしか捉えられていない、という方も、実は存外多いかもしれません。
この記事では、なにかとややこしい「円高」「円安」について、
を分かりやすく解説します。
世界中で流通している、さまざまな種類の通貨。
そんな通貨の価値は「相対評価」によって決定されます。
日本円の価値も、世界各国の外貨との相対評価によって日々変動しています。
円の需要が高まり、価値が高まった状態を「円高」。
円の需要が下がり、価値が下がった状態を「円安」と言います。
たとえば、「1ドル=100円」の時期があったとしましょう。
この為替相場が「1ドル=80円」になると「80円で1ドルが買える」ということになるので、1ドル=100円時よりも円の価値が高まった――つまり【円高】となります。
逆に「1ドル=120円」になった場合は「1ドルを買うために120円も必要になる」ため、円の価値が下がった――つまり【円安】となります。
下記の表をご覧ください。
為替相場 | 100円で買えるドル | 円高 / 円安(対1ドル=100円時) |
---|---|---|
1ドル=80円 | 1.25ドル | 円高 |
1ドル=100円 | 1.00ドル | - |
1ドル=120円 | 0.83ドル | 円安 |
「1ドル=80円」時の日本円は「1.25ドル」分の価値。
「1ドル=120円」時の日本円は「0.83ドル」分の価値となっており、より日本円の価値の高さ・低さがイメージしやすいかと思います。
なお、「○円だから円高 / 円安」といった明確な基準はなく、ある期間と比較して円高・円安といった考え方をすることが一般的です。
よく「輸出超過(日本の製品が外国でよく買われている)の時は円高、輸入超過(外国の製品が日本国内でよく買われている)の時は円安」と言われます。
たしかに、輸出入や旅行客の増減などによっても為替相場は変動し、円高になったり円安に転じたりします。
しかし実は、為替相場の変動には、世界中の投資家によるお金の動きがより大きく影響しているのです。
投資家らは世界各国の政治や経済、社会情勢といったさまざまな情報をもとに投資内容を決定するため、為替相場もこれに応じて頻繁に変動することになります。
円高・円安にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
まずは円高のメリット・デメリットから見ていきましょう。
円高のメリットは以下の3つです。
円高になる=円の価値が高まると、円安時よりも少ない日本円で外貨に両替することができます。
そのため、外国の通貨や製品、サービスなどを安く購入することが可能になります。
輸入が有利になるため、輸入産業の業績も伸びやすくなります。
円高のデメリットは以下の2つです。
海外資産を保有している場合、円高時に日本円に換金しようとすると、円安時よりも少ない金額になってしまいます。
また、日本の製品・サービスが相対的に高額になるため、輸出の面では不利となります。
続いて、円安のメリット・デメリットを見ていきましょう。
基本的には、円高のメリット・デメリットを反転させたものが円安のメリット・デメリットとなります。
海外資産を日本円に換金するのであれば、円安時を狙うのがおすすめです。
また、日本の製品・サービスが相対的に安価になるため、海外からの観光客や輸出量が増加します。
円安時には、外貨への両替に多くの日本円が必要となるため、海外商品やサービスの購入、輸入時にかかる費用が増加します。
また、日本のエネルギー自給率は極めて低く、大半を輸入に頼っているため、円安時にはエネルギー資源が値上がりしてしまうという大きなデメリットもあります。
円高と円安について、要点を絞って分かりやすくまとめました。
円高と円安を理解する際のポイントは、日本円の「価値」が高いか / 低いかという点です。
「1ドル=80円」と「1ドル=120円」を見比べると、直感的に「1ドル=120円」のほうが高い=円高と思ってしまいがちですが、そうではありません。
あくまで「日本円の【価値】の高さ / 低さ」がポイントとなるため、「1ドル=120円→1ドルを買うために120円も必要になる→日本円の価値が低い→円安」が正解です。
もし今後もまた混乱してしまうことがあれば、「日本円の価値は上がったのか、下がったのか?」という視点で考えてみてくださいね。