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賃貸物件を定期借家で貸し出すならここに注意!メリットデメリットをもとに解説

2022年11月11日 金曜日

2022年8月31日、お台場のレジャースポット「パレットタウン」が閉館し、長らくお台場のシンボルとして愛されてきた大観覧車前には別れを惜しむ人々が大行列を作りました。

なぜ、大観覧車や「チームラボボーダレス」といった人気施設を抱えるパレットタウンが、閉館の憂き目に追い込まれたのでしょうか。

その理由のひとつに「事業用定期借地権」の更新が成せなかったことが挙げられます。

事業用定期借地権とは「定期借地権」の一種で、予め期間を定めたうえで事業用借地を貸し出すというものです。

期間が満了し、地主と借主の双方が再契約の合意に至らなかった場合は、借地を地主に返還しなければなりません。

今回の例では、地主である東京都が再契約を拒んだためにパレットタウンが閉館する運びとなったわけです。

このように、地主側の権利が強い「定期借地権」。

パレットタウンの例では事業用に限定した定期借地権でしたが、一般的な賃貸物件でも似たような契約を結ぶことができます。

それが「定期借家契約」です。

今回の記事では、そんな定期借家契約のメリットやデメリット、注意点などを解説します。

定期借家契約とは

「定期借家契約」とは、同一物件に住み続けられる期間が予め決められている賃貸借契約のことです。

原則として、借主が希望するかぎり同一物件に住み続けることができる「普通借家契約」とは異なり、「定期借家契約」では期間が満了すると契約は必ず終了となり、借主は速やかに退去しなければなりません。

ただし、貸主と借主の双方が合意すれば、「再契約」によって実質的に契約期間を延長することもできます。

契約期間は貸主が自由に決めることができ、1年未満などの短期間に設定することも可能です。

期間中の中途解約は原則認められていませんが、中途解約に関する特約を結んでいたり、入居者に転勤・療養・親族の介護といったやむを得ない事情が生じた場合には中途解約の申し入れをすることができます。

欧米の賃貸借契約ではスタンダードな方法ですが、日本では2000年に導入された比較的新しい制度である定期借家契約。

国土交通省が平成25年に行った調査によると、全国の賃貸物件のうち95%超が普通借家であり、定期借家はわずか4.1%に留まっています。

定期借家で貸し出すメリット

定期借家で物件を貸し出すと、以下のようなメリットが得られます。

  • 利用に期限がある物件も貸し出せる
  • 好ましくない住人にも契約終了時には退去してもらえる
  • 原則として、契約期間中は退去できない

利用に期限がある物件も貸し出せる

定期借家であれば、

  • 長期出張の間だけマイホームを貸し出したい
  • 半年後に取り壊すことが決定している

といった物件も期間限定で貸し出すことができるため、普通借家契約では貸し出せない物件であっても賃貸に出すことができます。

定期借家契約には「貸主が物件を貸し出すハードルを引き下げ、優良な物件を流通させる」という役割もあると言えます。

好ましくない住人にも契約終了時には退去してもらえる

騒音を始めとする住民トラブルは、賃貸物件オーナーの頭を悩ませる大きな問題です。

ひとたび住民トラブルが起きれば対応に煩わされることになりますし、入居者が退去してしまったり、クチコミなどで住民トラブルが知れ渡ってしまっては入居者も集めづらくなってしまいます。

定期借家契約であれば、万が一、住民トラブルを引き起こすような好ましくない住人が入居してしまったとしても、期間満了時には必ず退去してもらえます。

原則として、契約期間中は退去できない

前述したとおり、定期借家契約の場合、原則として中途解約は認められていません。

つまり、入居が決まれば、契約時に定めた期間中はずっと安定した家賃収入が得られるということです。

「いつ入居者が退去してしまうのか」

「空室が続いてしまったらどうしよう」

といった考えに煩わされずにすむということも、定期借家契約のメリットのひとつです。

定期借家で貸し出すデメリット

一方で、定期借家契約には以下のようなデメリットもあります。

  • 住める期間が制限されていることで敬遠する人も
  • 家賃や敷金を相場より低く設定する必要がある
  • 普通借家契約と比べて手続きが面倒

デメリットを理解しないまま定期借家契約を選んでしまうと、思わぬ不利益を被ってしまう恐れもあります。

定期借家契約で後悔しないよう、デメリットも正しく把握しておきましょう。

住める期間が制限されていることで敬遠する人も

一般的な「普通借家契約」であれば、原則として、入居者が希望する限り同一物件に入居し続けることができます。

一方、定期借家契約には「期間満了時には必ず退去しなければならない」という制約があるため、入居希望者が定期借家への入居をためらう可能性が考えられます。

もちろん、双方が合意すれば再契約することも可能ですが、制約の存在に不安を覚える方も一定数いることでしょう。

家賃や敷金を相場より低く設定する必要がある

上述したとおり、定期借家契約の物件は普通借家契約の物件に比べて入居希望者を集めづらい傾向にあります。

そのため、家賃や敷金を相場より低く設定し、「定期借家に住むメリット」を入居希望者に提示することが求められます。

相場として、同条件の普通借家に比べて10%ほど低く家賃を設定することが一般的です。

同条件の物件よりも家賃相場や敷金などが低くなるため、そのぶん毎月の家賃収入は少なくなりますので注意しましょう。

普通借家契約と比べて手続きが面倒

普通借家契約は口頭で契約を結ぶことも可能ですが、定期借家契約の場合は公正証書などの正式な書面による契約しか認められていません。

また、定期借家契約最大の特徴である「契約更新がなく、契約期間満了時と同時に必ず契約は終了となる」旨は、正式な書面で借主側に説明されることが必須とされており、普通借家契約に比べて手続きが面倒となっています。

まとめ

日本ではまだまだ認知も少ない「定期借家契約」ですが、普通借家契約では貸し出せない物件であっても賃貸に出すことができ、期間満了時には必ず物件が手元に戻ってくるため、貸主にとってさまざまな魅力がある契約方法です。

また、短期出張が決まっている方や期間限定の仮住まいを探している方、少しでも安い家賃で家を借りたい方などとニーズが合致しやすく、借主にとっても魅力が大きいと言えるでしょう。

普通借家契約では貸し出せない物件をお持ちの方は、定期借家契約の活用を検討してみてはいかがでしょうか。