不動産投資用の収益物件を探すうえで目にする機会が多い「物件概要書」。
物件概要書の役割や記載されている項目、注意点などを把握しておくと、収益物件探しをより効率的に行うことが可能になります。
このコラムでは、
について解説します。
物件概要書とは、物件(土地・建物)に関する基本的な情報を整理して記載したもので、不動産投資のみならず、不動産取引全般においてまず間違いなく必要となる書類です。
売主・不動産会社・買主の三者を情報面で繋ぐものとして活用されており、「物件状況等報告書」や「物件資料」などと呼ばれることもあります。
書式や記載事項は特に定められておらず、多くの場合、取引の仲介役となる不動産会社が物件概要書を作成します。
不動産取引に関わる書類には「重要事項説明書」も存在しますが、物件概要書とは全くの別物です。
重要事項説明書とは、宅地建物取引業法(宅建業法)に基づいて、
を専門的にまとめた書類で、宅地建物取引士の資格を持つ人が作成・説明することが義務付けられており、省略することはできません。
物件概要書に記載されている項目は、以下の3つに大別されます。
それぞれについて見ていきましょう。
物件概要書に記載される「物件の基本情報」には、以下のようなものが含まれます。
物件概要書に記載された物件価格は「売主が希望する売買価格」ですので、必ずしもこの価格で売買されるとは限りません。
ほとんどの場合「消費税込み(※)」で記載されますが、特に記載がない場合には税込・税抜のいずれかを必ず確認しておきましょう。
※:土地部分や、投資用物件を除く中古住宅の個人売買は消費税の課税対象外となります。
実測距離を元にした所要時間(徒歩1分:80メートル、車1分:400メートルで計算)が記載されます。
信号や踏切の有無などは考慮されませんので、実際の所要時間はもう少し長くなる場合があります。
利回りとは「投資金額に対する収益の割合」を指す用語です。
物件概要書においては「想定利回り(※1)」が記載されていることが一般的ですが、想定利回りは「実質利回り(※2)」よりも高く算出されるため、必ず実質利回りを算出し直して物件の収益性を確認するようにしましょう。
利回りとは「投資金額に対する収益の割合」を指す用語です。
物件概要書においては「想定利回り(※1)」が記載されていることが一般的ですが、想定利回りは「実質利回り(※2)」よりも高く算出されるため、必ず実質利回りを算出し直して物件の収益性を確認するようにしましょう。
※1:物件価格に対して、1年間で得られる満室想定での家賃収入の割合
※2:不動産投資にかかる諸費用(管理費や保険料など)や空室率を考慮して算出された利回り
物件概要書には、土地に関する以下の情報も記載されています。
「都市計画・用途地域」の区分によっては、既存住宅の増改築や物件の建築ができない、あるいは関係各所から許可を得なければならないことがありますので注意しましょう。
建物に関する情報としては、以下のものが挙げられます。
「建物の種類」には、居宅・共同住宅・寮・事務所などの種類が記載されています。
物件の使われ方が登記簿謄本と異なっていないかどうかチェックしておきましょう。
物件の基本的な内容がまとめられた物件概要書は、理想の収益物件を見つけ出したり、複数の収益物件を比較したり、購入時の交渉などに活用することができます。
物件の基本的な内容がまとめられた物件概要書は、理想の収益物件を見つけ出したり、複数の収益物件を比較したり、購入時の交渉などに活用することができます。
気になる収益物件を見つけたら、不動産会社に検討の意思を伝えて物件概要書をもらい、内容を確認しましょう。
物件概要書を受け取ったら、
などを確認し、検討材料として活用します。
また、物件概要書は物件売却時にも活用することができます。
購入時の物件概要書を活用すれば、交通アクセスや面積などを調べ直す必要がありませんので、少ない手間で売却に必要な情報・書類を揃えることができます。
物件概要書を不動産投資に活用する際には、以下の点に注意しましょう。
先程もお伝えした通り、物件概要書に記載されている利回りは「想定利回り」であることが一般的です。
現状の家賃・入居状況を加味した「表面利回り」が記載されていることもありますが、どちらも物件購入時の諸費用や不動産投資にかかる諸経費を加味していないことにご注意ください。
法や条例に違反している「違法建築物件(法的瑕疵物件)」や、建築基準法で定められた接道義務を満たしていないため再建築ができない「再建築不可物件」でないかどうかにも注意が必要です。
違法建築物件は、購入時のローン審査が下りづらくなる可能性があります。
また、行政による是正指導に従わなければならないなど、建て替え時に制限が生じます。
再建築不可物件には、
などのメリットがあるものの、物件の建て替えや増築・改築が行えないという大きなデメリットがあるため、よほどの事情がない限りは避けることをオススメします。
不動産投資における最大のリスクは「空室リスク」です。
入居率が低い物件は空室リスクと常に隣り合わせにあり、入居付けに苦労することが想定されます。
入居率が低い物件は「収益性が低い」ため、担保としての資産価値が低く、金融機関から融資を受けられない可能性があります。
入居率が70%を下回ると融資のハードルが跳ね上がるため、入居率が低い物件には注意しましょう。
積算価格とは、土地・建物それぞれの「現在の価格」を合算した評価額のことです。
つまり、積算価格は「物件そのものの(現在の)価値」を表したものであると言えます。
積算価格は以下の計算式で求めることができます。
※路線価は「全国地価マップ」などで調べることができます。
この方法で算出した積算価格と物件価格を比較すれば、価値に対して物件価格が妥当かどうかを判断することができます。
また、積算価格は融資審査にも関わってくるので、事前に把握しておくと便利です。
物件概要書は、不動産投資における初期のステップである「収益物件探し」の足掛かりとなる書類です。
チェックポイントや不動産投資への活用方法、注意点などを念頭に置いたうえで、物件概要書を最大限活用していきましょう。