不動産投資におけるリスクというと「空室リスク」や「災害リスク」などがすぐに思い浮かびますが、実は「事故物件化リスク」もあることをご存知でしょうか。
国土交通省が発表している『(参考)死因別統計データ』によると、2019年における自宅での死亡者数は18.8万人。
死亡者数全体(138.1万人)の約14%を占めており、「自宅での死亡」は決して珍しいものではないことが分かります。
もし、所有している不動産投資マンションが事故物件となってしまった場合、どのように対応すればいいのでしょうか。
この記事では、
を分かりやすく解説します。
事故物件とは、居住するうえで何かしらの抵抗感や問題点(瑕疵/かし)が存在する物件を指す言葉で、法律用語では「瑕疵物件」と呼ばれます。
事故物件と聞くと「自殺や他殺によって人が亡くなった“いわく付き”の物件」をイメージしがちですが、実は事故物件には4つの種類が存在します。
雨漏りやシロアリ被害、土地の地盤沈下といった物理的な瑕疵がある物件のことです。
他の事故物件と比べて瑕疵が目視しやすく、問題が明確になっていることが多い傾向にあります。
物件そのものではなく、周辺環境に瑕疵がある物件のことです。
具体的に言えば、
などが挙げられます。
とはいえ、何に対して、どの程度抵抗感を覚えるかは人それぞれです。
また、「反社会的勢力の事務所」などは外観だけで判断しかねる場合もあり、後述する心理的瑕疵物件同様、事故物件として告知すべき事案の境界線が非常に曖昧となっています。
瑕疵の性質上、心理的瑕疵物件と一括りにされることもあります。
建築基準法や消防法など、建物を建てる際に必ず守らなければならない法律に適合していない物件のことです。
事故物件というよりは「違反建築物件」や「既存不適格建築物」、「再建築不可物件」などと言われることが一般的です。
建物内(マンションの共有部分含む)で事故や事件があり、居住するうえで心理的な抵抗感を覚える可能性がある物件のことです。
一般的に「事故物件」と聞くとこのイメージを抱く人も多いのではないでしょうか。
この記事でも「心理的瑕疵物件=事故物件」として解説していきます。
どこまでを心理的瑕疵物件として扱うかの判断が極めて難しいため、この境界を巡っては法廷でたびたび争いが行われてきました。
しかし、2021年5月に国土交通省によってガイドラインが制定され、法的義務はないものの、心理的瑕疵物件として告知すべきラインが初めて明確化されました。
ガイドラインの対象は「居住用不動産」のみとなり、オフィスや店舗は対象外となります。
また、部屋内に加えてマンションの共用部分も対象範囲となりますが、隣接住戸や前面道路などは対象外となることも明言されています。
ガイドラインでは、
については、心理的瑕疵物件として事前に告知すべき事案であると定めています。
賃貸借契約の場合、事案の発生からおおむね3年間は告知すべきとされており、それ以降は告知の必要がない(※)ともされています。
※:売買契約の場合は期限を定めず告知すべきとされている。
一方で、自然死または日常生活における不慮の死(入浴中の事故や誤嚥などによる死)については告知の必要がないとされていますが、発見が遅れたことで悪臭や虫被害などが生じ、特殊清掃の必要が生じた場合などには告知すべき対象に含まれます。
このガイドラインによって、これまで不明瞭であった「心理的瑕疵物件の範囲と告知」について、ひとまずの方向性が示されたこととなります。
所有している投資マンションが事故物件になってしまった場合、オーナーはどのように対応すればいいのでしょうか。
突然のことに驚かれるとは思いますが、まずは気持ちを落ち着けて、次のように対応を進めていきましょう。
オーナーが所有しているとはいえ、入居者がいる物件に無断で入るとトラブルになってしまう恐れがあります。
入居者が物件内で死亡している可能性が生じた際には、まず警察と保証人(相続人)に連絡を取り、立ち会いのもと物件内を確認してもらうようにしましょう。
相続人に依頼して、残置物(残された家財道具など)を処分してもらいます。
入居者が死亡したことで残置物の所有権は相続人に引き継がれますので、無断で処分しないよう注意が必要です。
残置物の処分に加え、原状回復も相続人の対応範囲となります。
遺体発見のタイミングなどによっては、特殊清掃が必要となる場合もあります。
相続人から依頼された場合には、特殊清掃の手配などをオーナーが行うこともあります。
管理会社によっては取引実績のある業者を紹介してくれることもありますので、依頼された際には一度相談してみるといいでしょう。
原状回復に時間がかかってしまうと、悪臭や虫被害などが悪化し、近隣住民からのクレームや退去を誘発しかねないため、迅速に対応してくれる業者を選びましょう。
入居者が死亡したとしても賃貸契約は継続され、その権利は相続人に引き継がれますので、相続人に対して賃貸契約の解約手続きを行いましょう。
未収家賃がある場合は相続人に支払いを請求します。
また、敷金の精算を行い、残高がある場合には相続人に返還します。
新しい入居者を募集するにあたり、告知の仕方や家賃設定などを検討します。
経験豊富な管理会社であれば、知見に則ったアドバイスをくれるはずですよ。
原状回復にかかった費用のうち、「賃借人の故意・加湿、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧する」費用については相続人に請求することができます。
加えて、入居者の死亡原因や状況によっては、
などを損害賠償請求することも可能です。
こうした金銭のやり取りは極めてセンシティブなものとなるため、管理会社や弁護士に相談しながら慎重に進めるようにしましょう。
相続人が相続を放棄してしまうと、未収家賃や原状回復費用などを回収できなくなってしまいます。
損害賠償金があまりに高額になると相続放棄の可能性が高まり、オーナーに負担がのしかかる恐れがあるため、請求額の程度にも注意が必要です。