テクノロジーが日々の暮らしをより良く変えるように、不動産投資の分野にも「スマート化」の波が訪れています。
スマートホーム設備を導入した投資物件は、入居者の利便性を向上させ、空室対策・差別化・資産価値向上に寄与すると考えられています。
本記事では、そんなスマートホームを用いた不動産投資について解説します。
スマートホームとは、家電や設備などをインターネットに接続し、スマートフォンやスマートスピーカーなどを通じて制御・操作できるようにした暮らし方や住まいのことです。
「電気をつけて / 消して」などの音声だけで照明を操作する、というシーンを思い浮かべていただくと想像しやすいのではないでしょうか。
リモコンを探す、スイッチを押すために立ち上がるといった動作なしにさまざまな家具・設備を操作することができますので、生活の利便性が格段に向上します。
設備によっては出先から機器を作動させることも可能なので、一人暮らしの方にも大変喜ばれる「新しい暮らし方」です。
スマートホームは入居者の利便性だけでなく、オーナー視点でも運営効率・収益性に好影響をもたらします。
具体的に、スマートホームが投資物件に与えるメリットは以下の3つです。
スマートロック(スマホで鍵操作可能)やIoTセンサー付き照明・空調などは「先進性」「快適性」のアピール材料になります。
生活利便性の向上はもちろん、「スマートホームに住んでいる」こと自体がステータスとなりうるので、特に最新ガジェットやテクノロジーへの関心が高い層へのアピールポイントとなり、空室対策として役立ちます。
似たような条件(家賃・立地など)の物件と競合している際、スマートホームに対応しているか否かが最終的な入居判断に繋がる可能性もあります。
加えて、似たような条件の物件と比べて賃料を高めに設定しやすいというメリットもあります。
スマートホームの導入には一定の費用が必要となりますが、空室率の低下、および高めの家賃設定が可能になることで費用回収が見込めます。
スマートホームがもたらす利便性は、対入居者向けばかりではありません。
遠隔監視カメラ、エネルギー使用モニタリング、センサーによる無駄電力カットなどで、電気代・メンテナンス対応コストを抑えられる可能性があります。
鍵交換や訪問対応など、現場に足を運ぶ手間を削減できる点もオーナー・管理会社の負荷軽減にも繋げられると期待できます。
将来の住宅市場において、スマートホーム設備を備える物件は「標準仕様化」の流れにおいて高評価を受ける可能性があります。
物件の資産価値を長く維持する・向上させるという観点からも、スマートホームは適した選択肢であるといえるでしょう。
スマートホームの強みは出口戦略にも役立ちます。
物件売却時に設備の導入実績や電気代削減実績を提示できれば、買主からの評価材料となるでしょう。
もちろん、スマートホームにはメリットばかりではありません。
導入には注意点と課題もあり、それらを正しく認識したうえで判断することが大切です。
具体的な注意点と課題を見ていきましょう。
スマートロックやIoT照明などの設備であれば比較的安価に始められますが、太陽光発電+蓄電池、家全体制御システム等になると、その導入費用は数百万円規模になることもあります。
導入範囲を精査し、投資回収シミュレーションを事前に作成することが重要です。
電子機器・センサーには寿命があり、使用状況などによっては都度故障や交換が生じます。
ランニングコストを見落とすと収益を圧迫するリスクがありますので、前述した投資回収シミュレーションには必ず修繕費や交換費用を見込んでおくようにしましょう。
技術進歩により導入設備が陳腐化してしまう可能性もあるため、拡張性・互換性を意識した設計が望まれます。
スマートホームでの暮らしを望む層と、設備をあまり重視しない層が混在します。
導入費用を賃料に転嫁しすぎると、価格敏感な入居希望者を逃す可能性があります。
物件の立地と、そこに集まる入居希望者のニーズを正しく分析し、スマートホームが入居希望者にマッチするかどうかを慎重に見極めるようにしましょう。
また、設備操作方法やトラブル対応に対する説明・サポート体制も必須となります。
スマートホームを投資物件に取り入れ、確実に効果を引き出すには、段階的・戦略的な導入と運用が鍵です。
まずは導入コストと収益改善インパクトのバランスを見て、スマートロック、IoT照明、室内温湿度センサーといった導入難易度の低い設備から検討を始めましょう。
電気代データ可視化、遠隔監視、防犯カメラなど付加価値の強い設備も順次検討していきます。
複数の物件を所有している場合には、いきなりすべての部屋に完璧なシステムを導入するのではなく、モデルルームで試験導入したうえで、その成功をもとに他室へ展開していくことをお勧めします。
新しい規格やプロトコル(例:Matter規格、オープンAPI仕様など)を念頭に置いた拡張性設計も取り入れられると良いですね。
入居募集段階で「スマート設備付き」や「省エネ」「IoT制御可」の訴求を明示するようにしましょう。
「最先端の暮らし」など、最新ガジェット・テクノロジー好きの層に刺さる訴求を打ち出し、ターゲットを明確化することが大切です。
実際に操作体験できる見学モデル設置や動画説明、機能説明書配布などを通じて安心感を提供できるとさらに良いですね。
設備の稼働状況や電力使用データを定期的にチェックし、異変があれば早期対応するようにしましょう。
もちろん、入居者のフィードバックを集めることも大切です。
フィードバックを元に、操作性の改善や機能調整、本当に必要なスマートホーム設備の選定などを継続することで、より効率的かつ適切な運用が可能となります。
スマートホーム設備を備えた投資物件は、差別化・資産価値向上・運営効率化という三方善で効果を発揮する可能性があります。
もし、現在所有している物件の空室率に悩んでいる、あるいは購入を検討している物件の周囲に競合物件が多いなどの場合には、スマートホーム設備を導入することで差別化を図ることも手段のひとつです。
とはいえ、スマートホームには初期投資・維持コスト・陳腐化リスクなども存在します。
物件が建つエリアの入居者ニーズによっては無用の長物となる恐れもあるため、導入の有無を慎重に見極めることが成功への鍵です。
戦略的かつ段階的な導入を通じて、未来の不動産価値を築きましょう。