不動産投資において、1階の物件はあり?それともなし?
そんな疑問に答えるため、まずは「借主目線」で1階物件のメリット・デメリットを見ていきましょう。
1階の物件に対しては「なんとなく避けたい」というマイナスイメージがある方も多いでしょうから、先にデメリットからご紹介します。
賃貸物件の借主にとって、1階物件には以下のデメリットが考えられます。
1階の物件は窓やベランダから侵入しやすいため、セキュリティ面を懸念する人も多いもの。
事実、警視庁が公開している「住まいる110番」では、令和3年における侵入犯罪の発生件数を以下のように発表しています。
3階建以下への侵入件数と4階建以上への侵入件数では、倍以上の差があることがお分かりいただけるかと思います。
さらに、窓から侵入する「ガラス破り」での侵入件数で比較すると、
と、3階建以下の低階層は窓が狙われやすいことも分かっています。
女性の場合、1階のベランダに洗濯物を干していると、その内容から女性の一人暮らしであることがバレてしまったり、下着などの盗難被害に遭ってしまう恐れもあるでしょう。
1階の物件は通りから窓が覗き込めてしまうため、プライバシー面を気にする人もいらっしゃいます。
ベランダで洗濯物を干していると通行人と目が合ってしまって気まずい、目の前が駐車場のため常に人の気配があり落ち着かない、などの可能性も考えられます。
1階の物件は道路に近いため、高層階に比べて排気音や通行人の喋り声といった「外からの音」が気になりやすいというデメリットもあります。
コロナ禍でおうち時間が増え、騒音によるトラブルが激増している昨今。
「家の前が通学路のため、登下校時間になると騒がしすぎてオンライン会議すらできない」といった悩ましい声も聞かれます。
1階の物件は周囲の建物の日陰になりがちなので、どうしても日当たりが悪くなります。
また、高層階のような眺望を期待することも難しいでしょう。
日当たりが悪いと、日中でも電気をつけて過ごさなければならなかったり、冬の冷え込みが厳しくなる可能性があります。
外の地面の影響を強く受けるため、湿気や結露によるカビにも注意が必要です。
家の中で害虫に出くわすという事態は誰だって避けたいですよね。
夏の夜、暗い寝室で蚊の羽音に起こされてイライラした経験がある方も多いことでしょう。
高層階の物件であれば、こうした虫被害のリスクは激減します。
アース製薬研究部の方の話によると、蚊の種類によるものの、日本ではマンションの3階くらいまでの高さが限界(飛んでこない)と言われているらしく、たとえエレベーターなどを通じて侵入してきたとしても、高層階でそう長くは生き延びられないそうです。
物件選びの際に「虫被害の有無」を最重視する人はあまり多くないと考えられますが、実際に1階の物件に住んでみて虫被害の多さを痛感するケースもあるようです。
さまざまなデメリットを挙げてきましたが、もちろん1階物件には魅力的なメリットも多くあります。
中でも大きなメリットは以下の4つです。
1階の物件を選ぶ最大のメリットは、2階以上の物件とくらべて家賃相場が安いことでしょう。
物件にもよりますが、ひとつ階を上がるにつれて家賃が千円~数千円ほど上乗せされることが一般的で、1階と2階で家賃に5千円以上の差が出るケースも珍しくありません。
仮に月々の家賃が5千円安くなれば、年間では6万円もの節約になります。
それでいて立地や設備は上階と同条件なわけですから、金銭的な余裕がない学生や、立地重視のサラリーマンなどに高い需要が見込めます。
1階の物件は物件価格相場も安い傾向にあるため、物件購入のハードルが低いという点も魅力のひとつです。
足音やスマホの振動音などは、意外と階下に響くもの。
外出自粛の運動不足解消を目的としてトランポリンが流行しましたが、2階以上の物件ではこうした遊具の利用も憚られます。
なかなか外出もままならない状況で、物音にまで気を配って過ごすことは大きなストレスになります。
とりわけ、遊びたい盛りの子供がいるご家庭であれば、子供が飛び跳ねるたびにヒヤヒヤしなければなりません。
1階の物件であれば、そうした階下への心配も不要となります。
1階の物件は、家と外との出入りがしやすいという点も魅力です。
引越しの際はもちろん、買い物帰りやゴミ出し、アウトドアに出かける際などにも、大きな荷物を抱えて何度もエレベーターや階段で往復する必要がありません。
引越しの荷運びやエアコンの取り付けなどは、1階物件と2階以上の物件で値段が大きく異なる場合もあります。
また、冷蔵庫やピアノなどの大物はエレベーターや階段でつっかえてしまう恐れもありますが、1階の物件であれば玄関口さえクリアしてしまえば大丈夫なので、選択肢が広がります。
1階の物件には、出入りがしやすい専用の出入り口や、広めのテラスや庭などがついているケースもあります。
気軽に外出しづらくなった近年、ベランダでピクニック気分を楽しむ「ベランピング」が流行していますが、広めのベランダやテラスがついた物件であれば、こうしたおうち時間もより一層充実することでしょう。
もちろん、専用設備がついている物件はそのぶん家賃や物件価格が高くなりますが、在宅時間が増えた昨今においては家賃の負担増以上に魅力的なメリットとなるでしょう。
ここまでは賃貸物件の借主目線で1階物件のありなしを見てきましたが、ここからはオーナー目線で1階物件について考えていきます。
物件価格相場が安く、中階層・高階層とはまた異なる魅力を有する1階物件。
そんな1階の物件で不動産投資を成功させるために重要となるのが以下のポイントです。
1階の物件の最たる魅力は「家賃の安さ」ですが、ただ安いだけでは賃貸需要は見込めません。
「立地がよく、設備が整った物件にも関わらず家賃が安い」といった魅力が揃って初めて、コスパを求める借主らからの高い賃貸需要が期待できるのです。
駅から近く、周辺環境が整っている物件であれば、将来的に売却するとなった際の売却ハードルも引き下げることができますよ。
RC造(鉄筋コンクリート構造)の物件は気密性が高いため、木造の物件に比べて虫被害を減らすことができます。
もちろん、ドアや窓の開閉時に侵入してしまうことはありますが、木造のように壁などの隙間から侵入してくる確率は激減することでしょう。
RC造の物件は、気密性が高いぶんカビや結露が発生しやすいというデメリットがありますが、新しめの物件であれば24時間換気システムが導入しているため、このデメリットもかなり軽減されています。
1階物件のデメリットである「日当たりの悪さ」を軽減するには、南向きに窓がある物件を選ぶことが一番です。
窓が大きければ大きいほど、1階であっても室内を明るく保つことができますよ。
目の前を幹線道路が走っていたり、歓楽街が広がっていたりすると、騒音被害やプライバシーの侵害リスクが大きくなります。
こうしたデメリットを軽減するには、車や人通りが少ない立地を選ぶことも手段のひとつです。
ただし、あまりに閑散としたエリアであれば、今度は防犯面が心配になってしまいます。
また、スーパーや飲食店が遠いといった不便も考えられるため、立地の良し悪しは慎重に見極めるようにしましょう。
1階の物件を購入後、業者に頼んで二重窓を取り入れるのも有効です。
鍵を2回破らないといけない二重窓は、早くその場を立ち去りたい泥棒から避けられやすく、防犯面で優れた効果を発揮します。
また、二重に音をブロックしてくれるため、騒音対策としても役立ちます。
より防音効果を高めたい場合は「防音合わせガラス」を導入するといいでしょう。
また、二重窓は室温の維持にも役立つことから電気代を節約しやすく、カビや結露の抑制にもつながります。
泥棒が侵入経路として目をつけやすいベランダやテラスには、防犯カメラを設置しておきましょう。
本物の防犯カメラであることが望ましいですが、ダミーでも一定の効果が期待できます。
こちらは物件選びのポイントではありませんが、入居者を募集する際に1階物件のメリットをしっかりと伝えることも重要です。
立地や設備にこだわっているのであれば、その点についてもアピールしておきましょう。
二重窓や防犯カメラなどの設備を導入していれば、1階の物件に忌避感がある人の心理的ハードルを大きく引き下げてくれるはずですよ。
物件価格相場が安く、高い利回りが期待できる1階物件。
物件の選び方によっては2階以上の物件と遜色ない賃貸需要が見込めるため、より慎重に物件を見極めるようにしましょう。