不動産投資ローンを検討していて「オーバーローン」や「フルローン」という言葉を目にしたことはありませんか?
この記事では、そんなオーバーローン・フルローンに関する以下の項目について解説します。
不動産投資における「オーバーローン」には、大きく二つの意味があります。
ひとつは「ローン残高が、その不動産の時価を上回っている状態」のことです。
つまり、たとえ売却によって得たお金を全額返済に充てたとしても、まだローンが残ってしまう状態を指します。
ローンが残っているということは「抵当権」が残っているということであり、売主が返済を滞らせると金融機関によって不動産が差し押さえられてしまう恐れがあるわけですから、そのようなリスク物件を欲しいと思う買主はまず滅多に現れないでしょう。そのため、オーバーローンになる場合は自己資金で不足分を補い、ローンを完済してから売却することが一般的です。
もうひとつ、オーバーローンには「物件価格だけでなく、購入にかかる諸費用(登記費用など)も借り入れる」という意味合いもあります。
近年ではこちらの意味で「オーバーローン」が使われることが増えていますが、念のため、オーバーローンという言葉が出たらどちらの意味か確認するようにしましょう。
この記事では、後者の「物件価格だけでなく、購入にかかる諸費用も借り入れる」オーバーローンについて解説します。
オーバーローンと似た単語に「フルローン」がありますが、フルローンは「物件価格を全てローンで賄う」ことを指します。
例えば、物件価格5,000万円の物件があったとします。
購入にあたって必要となる諸費用は、総額500万円としましょう。
一般的なローンでは、物件価格の20%程度を頭金として入れますので、物件価格の80%である4,000万円をローンで賄います。
頭金1,000万円と諸費用500万円は自身で用意するため、必要となる自己資金は1,500万円です。
フルローンでは、物件価格の5,000万円を全てローンで賄います。
しかし、諸費用の500万円は自身で用意しなければならないため、フルローンとはいえ自己資金500万円が必要となります。
オーバーローンでは、物件価格5,000万円に加えて諸費用の500万円も全てローンで賄います。
そのため、自己資金ゼロで不動産投資を始めることができます。
一般的なローンでは自己資金1,500万円が必要となるのに対し、フルローンでは500万円、オーバーローンに至ってはゼロで不動産投資を始めることができますので、自己資金に不安がある方や手元に現金を残しておきたい方でも不動産投資に取り組みやすいことが分かります。
ここからは、一般的なローンに対するオーバーローン・フルローンのメリットとデメリットを見ていきましょう。
まずはオーバーローン・フルローンのメリットをご紹介します。
オーバーローンとフルローン最大のメリットは、やはり何といっても「少ない自己資金で始められる」ことでしょう。
フルローンでは諸費用分のみ、オーバーローンでは自己資金ゼロで不動産投資を始めることができるため、
であっても不動産投資に取り組みやすいというメリットがあります。
ただし、デメリット部分で詳しく解説しますが、月々の返済負担が大きいオーバーローンやフルローンは返済が滞るリスクが高いため、不測の事態に備えて一定額の自己資金を用意しておくようにしましょう。
レバレッジとはいわゆる「てこの原理」で、投資活動におけるレバレッジ効果は「他人資本(ローン)を用いて投資効果を高めること」を指します。
一般的なローンに比べて自己資金の持ち出しが少ない、あるいはゼロで済むオーバーローンやフルローンでは、レバレッジ効果を最大限高めることができます。
団信に加入しておくと、契約者に万が一のことがあった場合、残債が全て保険金から支払われます。つまり、ローン残高が多ければ多いほど団信の恩恵を受けやすいわけです。
オーバーローンやフルローンは一般的なローンよりも借入金額が多くなるため、万が一の時には団信のメリットを最大限享受することができます。
続いて、オーバーローン・フルローンのデメリットを見ていきましょう。
考えられるデメリットは以下の4つです。
オーバーローン・フルローン共に借入金額が多くなるため、そのぶん融資審査のハードルが高くなります。
収益性が高い物件を厳選したり、自身の属性を高めたりなどの対策が求められます。
借入金額が多いということは、月々の返済負担の大きさにも繋がります。
返済負担が大きいとキャッシュフローが悪化しますので、一般的なローン利用時に比べると利回りが低いことが考えられます。また、空室が生じたり、修繕が続いた時などに返済が滞るリスクも高くなります。
メリット部分で「オーバーローン・フルローンは少ない自己資金で始められる」とお伝えしましたが、あくまでそれは「始める時点」での話です。
不動産投資を健全に続けるためには、常に一定額の自己資金を備えておくことが重要です。
ローン返済中に金利が上昇すると総返済額が増加しますが、その増加幅はローン残高が多ければ多いほど広がります。つまり、借入金額が多いオーバーローンやフルローンは、そのぶん金利上昇の影響を大きく受けてしまうのです。
もちろん、金利が下がると大きな恩恵を得られるわけですが、金利上昇リスクには一層の注意が必要であると言えます。
少しややこしいですが、段落タイトルのオーバーローンは「ローン残高が、その物件の時価を上回っている状態」を指します。
借入金額が多いオーバーローンやフルローンでは、売却したくても査定価格(時価)がローン残高を上回ってしまう可能性が高くなります。
そのため、返済期間中に物件を売却したい場合には、自己資金で不足分を補ってローンを完済させておく必要があります。
オーバーローンとフルローンについての理解は深まりましたでしょうか。
様々なメリットがあるオーバーローン・フルローンですが、返済負担の大きさや金利上昇リスクの高さといったデメリットもあるため、利用には慎重な判断が求められます。
「オーバーローンやフルローンを使えば今の自己資金でも不動産投資を始められるな」と「今」だけに目を向けてしまうのではなく、オーバーローン・フルローンを検討するのであれば、月々のキャッシュフローや返済計画といった長期的な視点で考えるようにしましょう。