「投資」と「投機」は、明確な定義こそないものの、似て非なる言葉です。
それぞれの特徴やメリット・デメリットを知ることで、「投資」と「投機」のどちらが自分に向いているかを知り、資産運用の方向性に役立てましょう。
投資と投機について、Wikipediaでは以下のように定義づけています。
――引用:投資 – Wikipedia
■投機――引用:投機 – Wikipedia
また、野村證券が提供している証券用語解説集では、以下のように定義づけています。
――引用:投資|証券用語解説集|野村證券
“投機(とうき)――引用:投機|証券用語解説集|野村證券
これらふたつの定義をもとにすると、投資も投機も「将来的な利益を得るために資本を投じる活動」という点で一致していますが、投資のなかでも特に「短期的な売買によってキャピタルゲインを取得することを主目的とした活動」を投機と定義づけることができます。
つまり、広義としての「投資」のなかに、「短期的」かつ「キャピタルゲインの取得を目指す」性質を備えた「投機」が存在するというわけです。
ただし、投資と投機を分ける明確な線引きは存在せず、その境界は極めて曖昧です。
記事や書籍などによっては、短期的な売買も含めてすべて「投資」と一括りに解説されることも珍しくはありません。
ごく一般的な単語である「投資」を使わず、あえて「投機」と謳っている場合は「短期的な売買を繰り返す投資活動」を指していると考えるといいでしょう。
この段落では、投資のメリット・デメリットをご紹介します。
なお、当記事では「投機」以外の資本活動を「投資」として解説するため、「投資=資産を長期間保持することによってインカムゲインの取得を主目的とした活動」とお考えください。
短期間で売買を繰り返す投機は、大きな収益が期待できる反面、大損を被る恐れもある「ハイリスク・ハイリターン」の性質を備えています。
一方、投資には時間をかけてコツコツと資本を増やしていく手法が多いため、投機よりも低リスクかつ安定した資産運用が可能となります。
また、運用によって生じた利益を再び投資に回すことで「複利効果」を得ることができますが、この複利効果は運用期間が長ければ長いほど高くなります。
つまり、長期的な運用を基本とする投資のほうが、より高い複利効果を得られるというわけです。
先程ご紹介したメリットの裏返しになりますが、一般的な投資においては、投機のように短期間で大きなリターンを得ることは困難です。
あくまで「長期的にコツコツと」資産を増やしていくことが目的となります。
また、投資においては長期スパンで価格変動予測を立てることが求められるため、予測の難易度が高い傾向にあります。
続いて、投機のメリット・デメリットを見てみましょう。
短期的な売買を繰り返し、キャピタルゲインを得ることを目的とする投機においては、早ければ数時間後に莫大な利益を上げることも可能です。
レバレッジ(直訳すると「テコの原理」)効果とは、少ない自己資金で多額の取引が可能となる仕組みのことです。
証拠金として一定額を担保に入れることで、その何倍・何十倍もの取引が行えるようになります。
FXに代表されるような高レバレッジ商品は、ハイリスク・ハイリターンのため長期保有には向きません。
短期間で決着をつける投機だからこそ、高レバレッジ商品にもチャレンジできると言えるでしょう。
こちらもメリットの裏返しになりますが、短期間で莫大な利益を上げられる可能性があるということは、その逆――つまり、一瞬で大損を被ってしまうリスクもあるということです。
数十倍にもレバレッジを効かせて取引をしていた場合、自己資金では到底賄えないレベルの損失を抱えることも珍しくはありません。
また、短期間で売買を繰り返すという性質上、取引時間中は売買画面から離れられないというデメリットも発生します。
投機商品は一瞬で大きく値が動くため、売買のチャンスを見逃すわけにはいかないためです。
それでは、投資方法ごとに「投資」か「投機」なのかを見ていきましょう。
その投資方法が投資、あるいは投機のどちらの性質を強く持つかを知れば、ご自身の資産運用スタイルに合うかどうかを判断しやすくなると思いますよ。
株式投資は、基本的には「投資」の性質を強く持ちます。
ただし、デイトレードのように短期的な売買を繰り返す場合は「投機」となります。
長期的な運用を基本とする投資信託は「投資」となります。
短期的に売買を繰り返すFXは「投機」の代表例と言えます。
数十倍レベルのレバレッジを効かせた取引も一般的なため、ハイリスク・ハイリターンであっても短期間で利益をあげたい、という方に向いた投資方法です。
長期的に不動産を保有し、家賃収入を得ることを目的とした不動産投資は「投資」となります。
バブル期の不動産投資は現在とは毛色が異なり、「多額の現金を保有する資産家が売却益(キャピタルゲイン)を狙って不動産を購入し、値上がったタイミングで売却する」という方法が一般的でした。
そのため、バブル期の不動産投資に限っては「投機」の性質が強いと言えます。
大手企業の動向やSNSでの発言などを受けて、一瞬で価格が乱高下する仮想通貨。
その性質上、基本的には「投機」に分類できますが、銘柄の価値向上を期待して長期保有するなどの場合は「投資」であると考えられます。
広義としての「投資(※)」と、ハイリスク・ハイリターンながら短期間で結果が得られる「投機」。
※:広く資産運用を指す言葉として用いられるが、「投機」と並べて語られる場合には「長期的」かつ「インカムゲインの取得が主目的」という性質を持つことが多い。
どちらがご自身の資産運用スタイルに合っているか、それぞれのメリット・デメリットからよく考え、最適な運用プランにつなげてくださいね。