大切な資産を次の世代に引き継ぐにあたって、きっと多くの人が「なるべく多くの資産を遺してあげたい」と考えることでしょう。
そのための選択肢としてよく検討されるのが「生前贈与」です。
この記事では、評価額が高額になりがちな不動産にフォーカスして、
の2点を解説します。
不動産を生前贈与すべきか相続すべきかお悩みの方は、当記事のメリット・デメリットを検討材料としてお役立てください。
不動産を生前贈与すると、以下のメリットを得ることができます。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
相続の場合、遺言という形で相続人を指定することはできますが、実は、相続人・受遺者(遺言によって遺贈を受ける人)全員の合意があれば、遺言とは違う形で相続することも可能なんです。
生前贈与であれば、贈与する相手やタイミングを好きに選ぶことができ、かつ確実に受贈者(贈与を受ける人)へ資産を贈与することができます。
また、生前贈与の回数や金額に制限はありませんので、複数回にわたって計画的に贈与することも可能です。
生前贈与によって手持ちの資産を減らしておけば、相続時の相続税をその分だけ低く抑えることができます。
ただし、生前贈与の際には「贈与税」がかかります。
贈与税の税率は相続税よりも割高ですので、何も考えずに生前贈/u与してしまうと、支払う税金の総額がかえって高くなってしまう恐れがあります。
節税効果を求めて生前贈与するのであれば、非課税枠や控除などを活用できる範囲で生前贈与できるかどうかを判断し、計画的に生前贈与していきましょう。
不動産投資をしていると、入居者がいる限り、収益物件から毎月家賃収入が入ってきます。
家賃収入から諸経費や税金などを差し引いた金額は「利益」として手元に残りますので、不動産投資を長く続ければ続けるほど資産が増え、相続時にかかる相続税が割高になってしまいます。
収益物件を生前贈与すれば、贈与したタイミングで家賃収入も受贈者に移転されます。
つまり、「その収益物件から将来的に得られるはずの収入を無税で贈与できる」こととなります。
マイホームの場合にも、生前贈与のメリットを享受することができます。
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、マイホームあるいはマイホーム購入用の資金を生前贈与する場合には、基礎控除110万円に加えて最大2,000万円の配偶者控除を利用することができ、控除された分だけ贈与税の負担を少なくすることができます。
一方で、不動産を生前贈与する際には以下のデメリットも生じます。
メリット・デメリット両方を把握した上で、生前贈与すべきかどうかをご判断ください。
前述した通り、税率自体は相続税よりも贈与税の方が高く設定されています。
最高税率は相続税・贈与税ともに55%ですが、贈与税では(基礎控除後の課税価格が)4,500万円を超えた時点で55%の贈与税が課税される一方で、相続税では(法定相続分の取得金額が)6億円を超えない限りは最高税率が適用されません。
税率や控除、特例などを踏まえた上でそれぞれの税金を計算しておかないと、「節税目的で生前贈与したにも関わらず、かえって贈与税がかさんでしまった……」という事態に陥りかねませんのでご注意ください。
不動産を取得した際には「不動産取得税」「登録免許税」が発生します。
贈与や相続によって不動産を受け継いだ場合も同様ですが、これらの税金は、相続時よりも贈与時の方が高く設定されています。
小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たした土地の評価額が最大80%減額できる制度であり、適用できれば相続税を数百、数千万円の単位で節税することができます。
小規模宅地等の特例が適用されるのは相続や遺贈、死因贈与のみですので、生前贈与では小規模宅地等の特例を利用することができません。
生前贈与から7年以内に死亡してしまうと、生前贈与した資産も相続税の課税対象財産に含まれてしまいます。
相続税の課税対象財産にされると、贈与税を支払って生前贈与したにも関わらず、追加で相続税も納めなければならなくなってしまいます。
(受贈者が法定相続人の場合)
元々は「死亡前3年以内」が相続税の課税対象財産になるとされていましたが、2024年1月1日以降は期間が7年間に延長されることとなりました。
生前贈与をお考えの方は、なるべく早く、かつ計画的に贈与をご検討されることをオススメします。
改めて、不動産を生前贈与するメリットとデメリットをおさらいしておきましょう。
この記事が、大切な資産である不動産を守る手助けになりましたら幸いです。